ブリヂストンサイクル70周年!独断でピックアップする10のトピック

2019年は、ブリヂストンタイヤ株式会社(当時)からブリヂストン自転車株式会社(当時)が分離独立してから70周年という節目の1年でした。そこで、2019年最後の記事では、ブリヂストンサイクル70年の歴史から印象に残る10のトピックを、当時のカタログやパンフレットの写真とともに紹介します。

1:ダイカスト製法

日本の自転車メーカーとしては後発だったブリヂストンサイクルですが、トップメーカーへと成長する上で大きな役割を担ったのが「ダイカスト製法」です。フレームのパイプを溶接やロウ付けするのではなく、ダイカストマシンでヘッド・シート・ハンガーの3箇所の接合部を同時に接合します。

(上写真は1963年のカタログより)

軽くて丈夫、そして誤差の少ないフレームを実現したダイカスト製法は、ブリヂストンサイクルのさまざまな自転車に採用され続けてきました。

(上写真は1969年のカタログより)

永くブリヂストンサイクルの技術を象徴する存在でしたが、2019年モデル以降のカタログでは、ダイカスト(ダイキャスト)フレームを謳った自転車は掲載されていません。

(上写真は2018年のカタログより)

2:スーパーライト

「スーパーライト」は、1960年代からブリヂストンサイクルを代表する車種として販売されてきた、その名のとおり軽量なシティサイクルです。1964年のカタログでは重量が「10.5kg」と書かれています。シングルスピード(変速なし)であることを考慮しても、かなり軽いです。

(上写真は1964年のカタログから)

持ったときに軽く走りも当然軽やかなスーパーライトは、モデルチェンジを繰り返しながら2010年代まで販売されました。多くのユーザーに愛用された名車です。

(上写真は1985年のカタログより)

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3:ロードマン

1970〜80年代、少年たちから絶大な支持を受けたスポーツ自転車がありました。それは「ロードマン」。

初代モデルの登場は1974年で、大人用のスポーツ自転車が持つかっこよさはそのままに、通学や週末のサイリングに使える入門モデルという位置付けでした。多くの少年がロードマンで通学し、そして夏休みにはサイクリングへと繰り出しました。

(上写真は1974年のカタログより)

初期のロードマンには「チョイスシステム」という多彩なオプションが用意されていたのも特徴で、これは、当時のスポーツカー「トヨタ・セリカ」の「フルチョイスシステム」を参考にしたものと言われています。

(上写真は1974年のカタログより)

その後のロードマンはラインナップの拡充を続け、最新メカもふんだんに投入されていきます。上の「ロードマン コルモ」は、ハイテクを謳った最新コンポーネントを搭載していました。しかし、ロードマンは「通学に使える自転車である」という立ち位置は、終始一貫していたように思います。

(上写真は1984年のカタログより)

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4:カマキリ

1980年代になると、自転車通学の風景が一変します。それは、1980年にブリヂストンサイクルが発売した「カマキリ」が、ロードマンに替わる大ヒット商品となったから。シンプルかつ安価、しかもファッショナブルなカマキリは、通学用途だけでなく幅広い世代の支持を受け、他メーカーにも大きな影響を与えました。今でも「カマチャリ」なんて言葉があるようです。

(上写真は1980年のカタログより)

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COLUMN 01:少年の夢をカタチにしたスーパーカー自転車

1970年代、ロードマンよりももう少し下の世代(小学生〜中学生)をターゲットとした自転車がすさまじい進化を遂げていました。「スーパーカー自転車」などとも呼ばれたジュニアスポーツ車です。こちらの「ヤングウェイ モンテカルロ」には、「ランチアタイプ」と「ポルシェタイプ(上写真)」が存在。それぞれ、アリタリアカラーのランチアと、マルティーニカラーのポルシェを模したカラーリングでした。派手なライトやトップチューブに鎮座するシフトレバーは、少年たちの憧れでした。

(上写真は1979年のカタログより)

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5:ベルトドライブ

チェーンのように磨耗せず、静かで油汚れとも無縁なベルトドライブは、今や通学車などを中心に幅広いユーザーに愛用されていますが、初めてベルトドライブが登場したのは1984年発売の「ベルレックス」。

(上写真は1985年のカタログより)

2001年には、通学ニーズを狙った「アルベルト」がヒット。現在まで続く看板モデルに成長しました。もちろん、ベルトドライブも改良が加えられ、進化しています。

(上写真は2001年のカタログより)

COLUMN 02:壮大だったファミコンフィットネスシステム

1989年、ブリヂストンサイクルと任天堂が「ファミコン・フィットネス・システム」を発表しました。これは、ファミコンでエクササイズバイク(エルゴメーター)をコントロールしたり、トレーニングメニューやデータの管理が行えるというもの。スポーツクラブ等を巻き込んだ壮大なプロジェクトでした。

(上写真は1989年のカタログより)

6:バルジ成形とネオコット

ブリヂストンサイクルが独自に開発した、最適形状理論(ネオコット理論)に基づいた設計の「ネオコットフレーム」。それが市販モデルとして初めて世に出たのは1991年のことで、「ワイルドウエスト」というクロモリフレームのMTBでした。その後、ネオコット理論に基づいた初代ネオコットクロモリロードフレームが、1993年に発売されました。

(上写真は1991年モデルのカタログより)

さて、ネオコット理論、つまり理想的なフレーム設計を実現するために欠かせないのが、油圧による「バルジ成型」です。このバルジ成型を最初に採用したのは、なんと1988年発売の子供車「カルテック」で、軽量化を目的として導入されたものでした。

(上写真は1988年のカタログより)

7:グッドデザイン大賞受賞

デザインを評価・顕彰する制度としてシンボルマークである「Gマーク」とともに知られる「グッドデザイン賞」(公益財団法人日本デザイン振興会・主催)。もっとも優れた製品に贈られる「大賞」を自転車として初めて受賞したのが、1998年の「TRANSIT(トランジット)T20SCX」です。カーボンモノコックフレームとシャフトドライブ、そして前後サスペンションを採用したノンフォールディング(非折りたたみ)の小径スポーツ自転車でした。

(上写真は1998年のカタログより)

その後、TRANSIT T20SCXのイメージはそのままに折りたたみ可能とした「T200CS」をはじめとするバリエーションモデルが展開され、一時代を築いたのです。

(上写真は2000年のカタログより)

COLUMN 03:一度見たら忘れないデザイナーズ自転車

ブリヂストンサイクル社外のデザイナーがデザインや監修を手がけ、そのことを前面に打ち出した自転車を3つ、紹介しましょう。

まずこちらは、建築家・黒川紀章氏が監修した、その名も「Kデザイン」です。シンプルかつ美しい、都会的な佇まいが印象的です。

(上写真は1989年のカタログより)

関連記事: 黒川紀章が監修したアーバンツアラー「K-design」(1989) – BRI-CHAN

イタリアの著名な工業デザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ氏もブリヂストンの自転車を手がけています。こちらの「BLOUSON(ブルゾン)」は、十字形のフレームや、そのフレームと一体的にデザインされたハンドルがなんとも未来的でした。

(上写真は1986年のカタログより)

関連記事: ブリヂストンサイクル名車紹介:ジウジアーロがデザインしたシティサイクル「BLOUSON」 – BRI-CHAN

ジウジアーロ氏といえば、こちらも忘れてはなりません。

「スーパーカー自転車」などと呼ばれたジュニアスポーツ車を、ジウジアーロ氏がデザインするとこうなる!? その名も「モンテカルロ・ジウジアーロ」です。ライトを手もとスイッチで操作できるだけでなく走行速度によって点灯モードが変わる「バルコンファーロ」というシステムがウリでした。

(上写真は1984年のカタログより)

8:子供乗せ電動アシスト自転車

子育て中の人には欠かせない「子供乗せ電動アシスト自転車」ですが、かつては実用然としたスタイルであり、かつ「ママが使うもの」というイメージがありました。それを覆したのが、2011年に発売された「HYDEE.B(ハイディビー)」です。

雑誌「VERY(ヴェリィ)」とのコラボで生まれたこの自転車は「パパもママも乗れるハンサムバイク」をコンセプトに、スタイリッシュで、かつ「パパにも似合う」デザインとなっています。「パパの育児参加」を意識した製品でもあったのです。

現在は「HYDEE.II(ハイディツー)」へと進化し、人気モデルであり続けています。

(上写真は2019年モデルのHYDEE.II)

リンク: ハイディツー | 子ども乗せ 電動アシスト自転車 | 電動アシスト自転車 | ブリヂストンサイクル株式会社

また、2009年には安全基準を満たした自転車に対して「幼児2人同乗」が解禁され、子供乗せ電動アシスト自転車のマーケットはさらに拡大することとなります。

「bikke GRI dd」は、HYDEE.IIとともに「二枚看板」とも言えるブリヂストンの人気モデル。リアチャイルドシートが標準装備され、後輪を前輪より一回り小さくすることで、乗せ降ろしがしやすくなっています。

(上写真は2020年モデルのbikke GRI dd)

リンク: ビッケ グリ dd | ビッケ | 子ども乗せ 電動アシスト自転車 | 電動アシスト自転車 | ブリヂストンサイクル株式会社

9:カーボンベルトドライブ

1984年に登場したベルトドライブも、その後進化を遂げています。

クロスバイクの「ORDINA(オルディナ)」シリーズや、近年発売された電動アシスト自転車等に採用されているのが、こちらの「カーボンベルトドライブ」です。

ベルトの芯の部分にカーボンを使用することで、ペダルを漕いだ時の踏み心地が、シャキッとしているのが特徴です。事実、駆動力がダイレクトに伝わり、力強い走りを実現しています。

現在では、従来の柔らかい踏み心地の「フローティングベルトドライブ」とシャキッとした「カーボンベルトドライブ」が、自転車のコンセプトによって使い分けられています。

10:デュアルドライブ

日本で発売されている電動アシスト自転車の多くは、クランク付近にモーターを搭載し、アシストパワーをチェーン経由で後輪に伝える方式が主流となっています。

ブリヂストンサイクルでは、2015年1月発表の「アルベルトe」から「デュアルドライブ」と呼ばれる前輪モーター方式を採用しています。前輪のハブにモーターを搭載することで、モーターの力で前輪を、人の力で後輪を駆動する「両輪駆動」を実現。安定感のある力強い走りを可能にしました。

COLUMN 04:60周年はどうだった?

今から10年前の2009年、ブリヂストンサイクルが60周年を迎えた年はどんな様子だったかというと「60周年記念モデル」が続々と発表されていました。

そのうちのひとつが「HELMZ(ヘルムズ)。ほんの少し前下がりで、エアロのようでありながら筋肉質なデザインが話題となりました。

リンク: HELMZ

子供車の「レベナ」も、60周年記念モデルとして発売されたもの。現在まで続くロングセラー商品に成長しています。

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おわりに

以上、独断で70年の歴史の中から気になる製品やトピックをピックアップしてみましたが、いかがでしたでしょうか。ブリヂストンサイクルはどことなく保守的な製品が多いイメージがあったのですが、こうやって振り返ると、実際にはなかなかチャレンジ精神が旺盛なメーカーなんですね。

これからも、見る者をびっくりさせるような製品やサービスが生まれてくることを、期待したいと思います。

text_Gen SUGAI(CyclingEX) 資料提供_ブリヂストンサイクル

協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社

1件のコメント

  1. この内
    ロードマン(ロードマンスーパーコルモ)、ネオコット(RNC7)、アルベルト(ロイヤル←息子の通学自転車)の三台所有の私は正しくブリヂストンマニア!
    どれも名車で大好きです!

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