2015年11月、ブリヂストンサイクルは東京・青山の外苑西通りに「RATIO &C」(レシオ・アンドシー)」をオープンさせた。
それまで同社のショールームとして運営していた「バイクフォーラム青山」のコンセプトを一新、「自転車のある暮らし」を提案するカフェ併設のコミュニティスペースとして生まれ変わったのである。
「自転車をスポーツや移動手段としてだけではなく、日々の生活をより豊かなものへと変えてくれるツールとして提案していきたいと思ってます。自転車本体やパーツだけではなく、生活雑貨なども販売しているのは、そういった理由からですね」
ショップマネージャー・伊丹 大さん(写真)の言葉通り、広々としたフロアには自転車とそれ以外の商品とが主従の関係ではなく「並列」にディスプレイされているのが特徴だ。サイクルショップというより、インテリアショップに近い佇まい。場所柄もあって自転車乗り以外のお客さんもかなり多いとか。
レシオ&シーで販売される自転車は「BRIDGESTONE NEOCOT(ブリヂストン・ネオコット)」と呼ばれるモデルのみ。上尾の本社工場で1台1台ハンドメイドされる、ここだけでしか手に入らないスペシャルモデルだ。加工方法の違う「N7」と「N3」の2種が用意されているが、どちらも街中での使用を前提にしたシティサイクルである。
「レシオ&シーでは自転車以外の商品も含め、流行に左右されず、長く愛用できる商品をセレクトしているんです。ネオコットのもつ普遍性というのはショップのコンセプトにまさにぴったりだと思います」
ネオコットはオーダーメイドによる受注販売方式。フレームカラーやハンドル、サドルなどの各パーツをチョイスし、好みの1台に組み上げてくれる。価格は15万円〜と決して安価ではない。とはいえ、90年代初頭に最新鋭のレース機材として開発され輝かしいヒストリーをもつ「NEOCOT」は、コアな自転車好きをも唸らすブランドである。
「今のところ、たまたま立ち寄ったお客さんがすぐに自転車を購入するというケースはまだ多くはありません。しかし、ライフスタイルとしての自転車の楽しみを知ってもらう大きなきっかけになっていると自負しています。今後はイベントやワークショップなどを通じて、たくさんの人がつながるような場所していきたいですね」
目先の利益だけを追い求めるのではなく、自転車の愉しみを「文化」として根付かせる。レシオ&シーの展開にはブリヂストンサイクルのリーディングカンパニーとしての矜持が強く感じられる。ちなみにワークショップの内容は自転車のことだけに留まらず「おいしいコーヒーの淹れた方」といったものまで多岐にわたる。
さまざまな分野の趣味人たちが自転車を介して相互に交流できるレシオ&シーはいわば僕らのための「サロン」である。どこかにあったらいいなと誰もが考えるけれど、なかなか実現しなかった念願の空間。それを、ブリヂストンサイクルがついにやってくれたわけだ。
- 住所 東京都渋谷区神宮前3-1-26
- TEL 03-6438-1971
- 定休日 水曜
- 営業時間 11:00〜20:00
- Web http://ratio-c.jp
text&photo_RYO SATO
協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社