天気のよい週末、クロスバイクで街中にあるちょっとした「非日常」を巡ってみませんか?
今回は、新しい元号「令和」が発表されたから……というわけでもないのですが、「平成」のひとつ前の「昭和」を感じさせる空間を、クロスバイクで訪ねてみることにしました。
その空間とは「純喫茶」です。
そもそも純喫茶という言葉は、戦前の「カフェー」(お酒を出し女性による接客のある業態)と「純粋な喫茶店」を区別するために出てきたようですが、今ではちょっとレトロっぽくて、いかにもという雰囲気の喫茶店を指していると言えるでしょう。もちろん、お店自ら「純喫茶」と名乗っているところもあります。
そんな純喫茶には、近年のコーヒーチェーンやカフェとは異なる時間が、流れているのです。
まさに異空間!? 大和に「フロリダ」あり
というわけで純喫茶を巡るわけですが、1件目からインパクトのあるお店をセレクトしてしまいました。
以前からずっと気になっていたんです、小田急線大和駅前にある「フロリダ」というお店が。まず、こういう感じの雑居ビルが首都圏では貴重になりつつあります。
フロリダはこの建物の2階にあります。「純喫茶部」と「カラオケ部」ってなんでしょう。
2階に上がると入口がふたつあって、カラオケ部は昼から楽しめるカラオケ喫茶のようでした。歌声が聞こえてきます。もちろん私は、この純喫茶のドアを開けて中へと入るわけですが……。
内部に対しての予備知識はゼロで入ったのですが、外観に負けず劣らずのインパクトのある空間です。この写真からは伝わらないと思いますが、地元の方と思われるお客さんで、席の半分は埋まっていました。
色調、観葉植物、絵や写真、奥に見える本棚、そしてタバコのにおい(分煙ではない)。ある意味「完璧」と言えるかもしれません。
メニューを見るとフードが思いのほか充実していましたが、今回はケーキセットを注文。クリーミーなモンブランは、コーヒーとの相性もばっちりです。
そして、入った瞬間は「異空間」と感じたものの、コーヒーを飲みながら10分も過ごしていると、なんだかとっても落ち着いてくるから不思議なもの。他のお客さんがどんなふうに過ごしているのか観察しつつ、当初の予定より長居してしまいました。
情報源: フロリダ – 大和/喫茶店 [食べログ]
大和市民に愛されるシックな珈琲専門店「茶居珈」
すっかりフロリダで落ち着いた後は、クロスバイクを大和駅前の駐輪場に置いたまま、少し歩いてこちらのお店に。
住宅街に佇む珈琲専門店「茶居珈(ちゃいか)」です。先ほどのフロリダとは打って変わって、落ち着いた外観です。中に入ってみると、カウンター以外の席はほぼ埋まっていました。やはり、地元の方々に愛されているのでしょう。
私はひとりで来ましたので、もちろんカウンターへ。琥珀色の砂糖が昔ながらの「喫茶店」を感じさせます。
アイスコーヒーとサンドイッチのセットがなかなかリーズナブルに思えたので注文してみると、想像以上にちゃんとしたものが運ばれてきてうれしくなりました。
先にサンドイッチとサラダを食べ終え、ゆっくりとアイスコーヒーを飲みながら、しばらくぼんやりと過ごします。
フロリダと茶居珈、まったくテイストの異なる喫茶店ですが、どちらも地元にしっかり根付いているのを感じ取ることができました。
大和の純喫茶2軒を紹介しましたが、小田急江ノ島線と相鉄線が交わる大和駅は江ノ島へとつながる境川サイクリングロードからも近いので、ぜひ寄ってみてください。
池袋のレトロな喫茶店はその名も「昭和」
続いて、東京都内の純喫茶を2軒、紹介しましょう。
2019年4月1日に新しい元号「令和」が発表されました。改元は5月1日に行われます。いよいよ平成が終わるわけですが、本当に過去のものになるのは、平成のひとつ前の「昭和」なのかな——とも思います。
だからというわけでもないけれど、池袋にある珈琲専門店「昭和」を目指します。
池袋はゴチャゴチャとしたイメージのある街ですが、それでも駅から少し離れると落ち着いた雰囲気になります。
西池袋公園の地下に「池袋西自転車駐輪場」があります。駅から少し距離がありますが(それでもじゅうぶんに至近)、そのせいか満車になっていないことが多いので、自転車で池袋に行く際にはぜひ頭に入れておきたい駐輪場です。
営業時間中は管理人さんがいます。
さて、目指す「昭和」は東京芸術劇場のすぐ近くにあります。
チェーン店に慣れきっていると、こういう間口のお店はハードルが上がるかも?
階段の壁には古時計がかかっていました。動いてはいません。
お店に入ると、いちばん奥のテーブルを案内されました。
壁にはたくさんの古時計。そして、昭和50年(1975年)に開催された沖縄海洋博のペナントが。
レトロな扇風機、そして昭和45年(1970年)大阪万国博のペナントまで。
年季の入ったメニューには「昭和ブレンド」と書かれていますが、残念ながら売り切れ。「平成ブレンド」もありますね。そのうち「令和ブレンド」もできるのでしょうか。
この日は天気が良かったので、やはりアイスコーヒーが飲みたい気分です。そしてフードメニューもなかなか魅力的で……。
「はちみつトースト」とアイスコーヒーのセットを注文しました。トーストの表面にはちみつが染み込んでいくあの感じ、好きなんですよね。
そして味わい深いアイスコーヒーを飲みながら、いろいろなことに思いを巡らせたり、もしくは何を考えるわけでもなく、時間の流れに身を任せれば、あっという間に1時間ほど経っていました。
平日は喫煙可、週末や祝日は禁煙となっているようで、この日は土曜日でしたが、さすがに店内はタバコのにおいがしみている感じ。それも含めて昭和なんでしょうね。
情報源: 本格珈琲 昭和 – 池袋/コーヒー専門店 [食べログ]
新宿三丁目の不夜城「珈琲貴族エジンバラ」
次に向かうのは新宿です。ちなみに新宿と池袋はどれくらい離れているか知っていますか? その距離は、大通りを避けても5kmほど。自転車でゆっくり目に進んでも30分弱で到着できます。
そして新宿は、コイン式の駐輪場が意外に多いのもポイントです。日常的に使用する自転車であれば、こういう駐輪場をどんどん活用したいものです。
そして向かったのがこちら、マルイ・アネックスの向かいあたりにある「珈琲貴族エジンバラ」です。かつて歌舞伎町にあった有名店で、一度は物件の都合で惜しまれつつ閉店したものの、その後、新宿三丁目に場所を移して復活しました。
看板に「24h」と書いてあるように、ここは「眠らない喫茶店」。これから陽が長くなってきたら、自転車でナイトクルージングを満喫したあとに寄るのもよいでしょう。
歌舞伎町にあったお店はレンガの内装が印象的でしたが、復活したこちらのお店でも随所にレンガが使われています。
メニューを開くと、目に入る「貴族ブレンド」の文字。新宿三丁目に復活してからは初めて来たので、なんだか新鮮な気分でその文字を眺め、迷わず注文しました。
まず、空のカップが運ばれてきます。
しばらく待っていると、コーヒーが注がれました。これが、貴族ブレンド。実は、サイフォンで1杯ずつ抽出されているのです。
「酸味と調和のとれた、深い味わい」というコピーが付けられていますが、最初のひと口は軽いのに、じっくりと飲み進んでいくと深みを感じるのが特徴です(と、個人的には思います)。
窓越しに要通りを歩く人たちを眺めていると、すっかり陽が暮れました。土曜の夕方から夜にかけて、お店にはひっきりなしにお客さんが来ていて、新しいお店になっても多くの人に愛用されているのがわかります。混み合っているのに、腰をおろしてコーヒーを飲むと落ち着く、不思議な空間でもありました。
昔と違うのは、仕切りこそないものの、喫煙席と禁煙席が分かれていることでしょうか。
情報源: 新宿24時間営業 | 珈琲貴族エジンバラ
情報源: 珈琲貴族エジンバラ (コーヒーキゾクエジンバラ) – 新宿三丁目/カフェ [食べログ]
今こそ巡っておきたい「純喫茶らしい純喫茶」
都会のど真ん中にありながら、一歩足を踏み入れれば、ゆったりとした時間が流れる「純喫茶」。少しタバコのにおいが気になったりもするけれど、チェーン店では得られない「体験」が、そこには待っています。
そして都会だけでなく、ちょっとした街には必ず喫茶店があって(もちろん、中には夜になればお酒を出すお店もあるでしょう)、地元の人に愛されています。そういったお店が生き残っている街が、私は好きです。
●今回使用した自転車 CYLVA F24(シルヴァ F24)
価格 52,800円(税別)
製品情報 https://www.bscycle.co.jp/items/commuting/greenlabel/cylva/index.html
※3年間盗難補償付き
車両提供:ブリヂストンサイクル
text&photo_Gen SUGAI(CyclingEX)
協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社
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