自転車で片道10kmちょい走ってみた — 高田馬場から浅草までのショートトリップ

シティサイクルでちょっと遠くまで足を伸ばしてみたり、初めて買ったスポーツサイクルでそれまで走ったことがないような距離を走ってみたり。そんな「自転車でちょっと遠出してみる」の最初のボーダーラインは、片道10kmではないでしょうか。


CHeRO 700Cで、神田川沿いのサイクリングを楽しむ。

いざ走り出してみればわかりますが、マイペースで走れば片道10kmという距離はなんなくクリアすることができます。そして、首都圏で片道10kmも走れば、実にさまざまな風景を見ることができるのです。というわけで、7月のある週末、自転車で片道10kmちょいのポタリングに出かけてみました。


全国有数の学生街である高田馬場は、いつ来ても賑やか。

スタート地点に設定したのは、東京都新宿区の北部にある、高田馬場駅。全国有数の学生街として知られる高田馬場駅周辺は、東京の主要駅周辺の中でも特異というか、とてもエネルギッシュで猥雑な雰囲気が特徴です。しかし、ほんの少し離れれれば神田川が流れており、落ち着いた空間が広がっています。今日はその神田川を、なんとなく10kmくらい下流の方向に走ってみようと考えました。


高塚橋から神田川沿いに進む。ローストビーフ丼に並ぶ人も、そうでない人も、みんな『ポケモンGO』に熱中。


街中を流れる神田川。鴨が行水中。

高田馬場駅から北のほうに進むと、すぐに神田川が流れています。飲み屋が連なる雑踏を抜け、ローストビーフ丼で有名なお店の行列を横目に見ながら、高塚橋から神田川沿いに入ることにしました。街中を流れる神田川の護岸は、当然コンクリートブロックで固められているわけですが、高塚橋のそばでは鴨が行水をしていて、水辺にいることを実感します。

今回のお供は、ブリヂストンサイクルの「CHeRO 700C(8段)」。クロモリフレームを用いたクラシカルなデザインが目を引きます。神田川沿いをのんびりと走るにはぴったりだろうと思い、お借りしました。


新目白通りと明治通りが交わる交差点を都電が通る。

神田川を下流に向かって進むと、すぐに大きな交差点に差し掛かります。新目白通りと明治通りが交わる「高戸橋」交差点です。明治通りの下には近年、東京メトロ副都心線が開通しましたが、この交差点の主役はなんといっても路面電車。東京都交通局が運営する、いわゆる「都電荒川線」が、この交差点を曲がっていくのです。


鬼子母神前方面から都電が坂を下ってくる。

神田川の下流方面には、都電荒川線の終点である「早稲田」の停留場があります。そこから新目白通りの中央を走ってにこの交差点までやってきて、左折して専用の軌道敷に入り、北上して鬼子母神前や東池袋の方へと進んでいきます。ちょうど両方向から電車が近づいてきたので、しばしカメラを構えて鉄チャンモード。


神田川の向こうに見えるのが椿山荘(左)。その手前には関口芭蕉庵がある(右)。

高戸橋から下流の神田川は、両岸に遊歩道が整備され、植栽も多くて、のんびりと自転車で進む分には快適です。一部、自転車は降りる(もしくは対岸に回る)ように指示される場所や、工事中の場所がありますが、基本的には川沿いに進むことができます。そして見えてきたのが「椿山荘」。その手前には、現在リニューアルのため休館中ですが、かつて松尾芭蕉が暮らした「関口芭蕉庵」があります。


首都高が神田川にへばりついている(左)。江戸川橋の商店にて(右)。西瓜が店先に並ぶと夏って感じ。

やがて神田川に沿って、首都高速道路が姿を現し、江戸川橋、飯田橋と進んでいきます。新目白通りから1本裏に入れば、とても静かな雰囲気です。そして小桜橋という橋を過ぎると目の前に見えてくる大きなビルが、大手印刷会社「凸版印刷」。


凸版印刷の企業ミュージアム「印刷博物館」。

このビルには印刷博物館という、その名のとおり印刷技術や印刷物の展示が充実した博物館が隣接しています。ただし残念ながら駐輪場は見当たりませんので、今日は入り口のモニュメントを撮影して、先に進むことに。

さて、飯田橋からさらに神田川に沿って進み、御茶ノ水〜秋葉原と進んでいけば隅田川に突き当たり、両国橋を渡って国技館あたりまで行けばだいだい10kmだというあたりはつけていたのですが、なんとなく気が変わり、左折してみます。


東京ドームの横を通る。隣接する遊園地、今は「後楽園ゆうえんち」とは呼ばないんですね。

小石川後楽園の横を進み、見えてきたのは東京ドーム。ドーム球場の屋根と「東京ドームシティアトラクションズ」(個人的には「後楽園ゆうえんち」のほうがなじみがある)のコースターが、道を挟んで並んでいます。

さて、どっちへ進もうか……悩みながらも、流れで壱岐坂通り経由で本郷三丁目のほうへと進み、春日通り沿いに旧岩崎邸庭園と湯島天満宮の間を進みます。この日は土曜日でしたが、クルマの交通量が少ないので、春日通りの車道もなかなか快適に走ることができました。700CのCHeROは壱岐坂通りの登りも難なくこなし、平地ではスムーズに巡行してくれます。しばし走りに集中していたら、あっという間に東京メトロ千代田線・湯島駅まで来てしまいました。そこから左にちょっと進めば、そう、上野公園です。


なんとなく到着した、上野公園。不忍池にハスの花が咲いていた。

ちょうどハスの花が見事に咲いている頃で、さらにこの日は上野近辺でお祭りがあったらしく、なかなかの人出です。少し自転車を押し歩いて公園の中を歩き、ハスの花にカメラを向けます。高田馬場を出発してからほとんど曇り空だったのですが、上野公園についた頃にようやく青空が見えました。ここで思い出したように、iPhoneで走り始めからの距離を確認すると、9km弱。いい感じです。


昭和テイストのアメ横周辺では、自転車を押し歩き。

その後、不忍通りに出て中央通りを越えたとき、私は「しまった」と思いました。私が進んでいる方向は、まさに「週末のアメ横」だったのです。とはいえ迂回するのも面倒なので、ガード沿いのアメ横通りだけは避けて、自転車をおし歩きながら、上野中通り〜上野Uロードと進んでみます。久しぶりに来た、アメ横周辺。完全に観光地化している感はありますが、そこにはまだ「昭和」があるような気すらしました。


春日通りを快調に流し、隅田川にかかる厩橋へ。

昭和通りに出たところで、距離は9.3km。まもなく目安の10kmとなりますが、もうしばらく進むことにしました。とりあえず、隅田川まで出てスカイツリーくらい拝んで行こうかな、と。そこで春日通りに出て(こちらも週末は交通量が少なくて走りやすい)、まっすぐ行けば隅田川だよな〜と思っていたら、数分で橋が見えてきました。厩橋(うまやばし)です。


隅田川沿いの裏道らしい風景。「駒」という看板が気になる。

厩橋から、川に近い裏道を上流へと進みます。堤防があるので川はまったく見えませんが、城東エリア、つまり江戸城の東側、今ふうに言うとイーストトーキョーらしい町並みが続いています。


こちらは駒形橋。工事中で殺風景なのが、やや残念。

そして太い通りに突き当たり、視界が開けて、東京スカイツリーが見えてきました。一瞬「浅草着いちゃった?」と思いましたが、まだでした。橋の色が違います。こちらは駒形橋です。


ほどなくして吾妻橋に到着。橋の歩道は観光客がいっぱい。

もう少し川沿いに進んで、駒形橋からひとつ上流の橋、吾妻橋(あづまばし)に到着。川の対岸を見れば、アサヒビールの本社「アサヒビールタワー」と「スーパードライホール」、そしてスカイツリーが見えます。橋の上は、海外からの観光客でごったがえしていました。


神谷バー(左)と東武浅草駅(右)。


吾妻橋のすぐ近くに、隅田公園の駐輪場があるので、ありがたく使わせていただく。

振り向けば、もちろん浅草。神谷バーの建物が目に付きますが、私はなんとなく、東武鉄道の浅草駅を見ると「浅草に来たな〜」と感じます。せっかくなので仲見世くらい歩いてやろうかと思いますが、さすがに自転車を押し歩くのは嫌なので、吾妻橋に隣接する隅田公園の駐輪場に自転車を置くことにしました。


週末の浅草が、混んでいないわけがなかった。


一本裏道に入ると、演歌歌手のポスターがびっしり貼られたレコード店が。

仲見世は、やはり観光客でごった返していました。たまに来る有名観光地も歩くないのですが、どちらかといえば、人の多いところは得意ではありません。すぐに脇道にそれてしまいました。すると、演歌歌手のポスターがずらりと貼られたレコード屋さんを発見。


「餃子の王さま」。気にならないわけがない。

さらに進むと、黄色い看板が目に留まりました。見れば「餃子の王さま」の文字。昭和29年創業の老舗だそうです。それって、あの有名チェーン店より歴史があるじゃないですか。少し覗いてみると、麺や炒め物などひととおり揃う大衆的なお店のようです。そして何より「餃子 420円」というプライスに惹かれます。


もっともベーシックな餃子。野菜の旨味が良い。

野菜の旨味が、効いています。なんてやさしい味なんだろう。輪行で帰宅できるなら、迷わずビールを注文したいところです。「神田川沿いに下って隅田川方面に、10kmくらい」としか決めていなかったサイクリングですが、浅草、来てよかった!

というわけで、高田馬場をスタートして、隅田公園の駐輪場に預けるまでの走行距離は12.6km。のんびりと走り、立ち止まって写真を撮っている時間も多かったので、1時間40分ほどを要しています。都心部のわずか10kmという距離の中にも、多彩な風景を見ることができたのは収穫でした。

こんなポタリングなら、ちょっと遅く起きた週末でも、気軽に楽しむことができるのではないでしょうか。

BRIDGESTONE CHeRO 700C(8段)


今回の走行ログ。

text&photo_Gen SUGAI(CyclingEX

協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社