自転車のチェーンをきれいにしてみよう

今年の夏は暑過ぎたこともあり、日中の炎天下では気軽にサイクリングという感覚にはなれなかったと思いますが、秋になり、よい気候になってきました。自転車に乗るにもちょうどよい季節ですし、このタイミングで愛車のお手入れなどしてみてはいかがでしょうか。

チェーンは力を伝える大切な部品

今回は、「チェーン」に着目してみたいと思います。チェーンは、人がペダルに与えた力を駆動輪である後輪に伝達し推進力とする上で、重要な部品のひとつです。乗り手の力を受け止め、それを余すところなく後輪に伝えるわけですから、常にストレスにさらされ消耗していきます。

では実際にチェーンの消耗とは何を意味するのでしょうか。また、メンテナンスはどうすればいいのでしょうか。

チェーンは消耗する

まず、そもそもチェーンは消耗するのでしょうか?

答えは「イエス」です。

チェーンは金属でできている丈夫な部品ではありますが、正しい使用環境の下でなければ、いとも簡単に消耗し、ひいては破損してしまいます。

では、一定の使用環境とはなんでしょうか?

  1. 錆びていないこと
  2. 汚れていないこと
  3. 正しく潤滑がされていること

この3つが極めて重要であり、逆に言えば、これさえできていればチェーンは最大限の仕事をしてくれます。

まずは、ご自身の自転車のチェーンを確認してみましょう。

このように、真っ赤に錆びていませんか?

錆とは、すなわち酸化です。

しっかりとチェーンオイルなどの油脂でコーティングしている状態でなければ、主に鉄でできているチェーンは簡単に錆びてしまいます。

もしくは、皆さんのチェーンはこのような状態にはなっていませんか?

マメな方に多いパターンとも言えます。

マメな方がやられているのであれば問題ないのでは?と思いがちですが、実はこれ「マメにチェーンオイルを塗り過ぎた」結果です。

「こてこて」に油脂でコーティングされているわけですから、錆びには大変強いと言えます。しかし冷静に考えてみると、やわらかいチェーンオイルが「こてこて」になるっておかしくないですか?

こてこてになるということは、こてこてになる媒体が存在します。それが「不純物」です。

ご自宅のキッチンにある換気扇。こてこてになっている方いらっしゃいますよね。あれは換気扇に付着した油に空気中の埃やいろいろなものが換気扇によって外部に吸い出されようとするときに付着し、どんどん蓄積していったもの。結果、油と混じってこてこてになるのです。

自転車の場合は、走行することにより巻き上げられる埃や砂、土、チェーンやギアが削れることによる金属粉が媒体となって、時間をかけて立派なこてこてを作り出します。こてこてに含まれる不純物は、チェーンやスプロケットなどの金属部品の消耗を早めてしまうため、絶対にこてこては作ってはいけません。

このような状況にならないよう、私たちがやらなければいけないことは簡単です。「定期的にチェーンをきれいにして、チェーンオイルをつけてあげる」。これだけなのです。

毎日食事で使ったお皿は、食事が終わったらすぐに洗えば比較的簡単にきれいになります。しかし放っておくと汚れを取るのにひと苦労ですよね。チェーンも面倒がらずに、こまめにきれいにしておきましょう。

チェーンを洗ってみよう

ここからは、チェーンのメンテナンス方法を具体的に紹介していきます。

今回は、次のアイテムを使用します。

  1. チェーンクリーナー、またはディグリーザー(エアゾールタイプ、ボトルタイプいずれもOK)
  2. マルチクリーナー
  3. ブラシ(専用のブラシもありますが、歯ブラシなどでもOK)
  4. マイクロファイバーウェス
  5. 作業用グローブ(軍手などでも代用できます)

こちらが洗浄前の状態です。

わかりにくいかも知れませんが、本来もう少し輝きのあるチェーンローラー部分が、不純物でくすんでいます。

はじめに、チェーンクリーナーまたはディグリーザーを使用して、汚れを柔らかくします。女性がお化粧を落とす際に、いきなり石けんで顔を洗わずに、まずはクレンジングオイルでファンデーションやマスカラを柔らかくするのと同じイメージです。今回は「WAKO’S(ワコーズ)」の「チェーンクリーナー」を使用します。

リンク: WAKO’S – 株式会社和光ケミカル

この時に、専用ブラシや歯ブラシなどでチェーンをブラッシングします。

とくにチェーンのローラーの内部に入った汚れをしっかりと搔き出したいので、ローラーを回すようにブラッシングするのがコツです。

しっかりブラッシングができたら、次にマルチクリーナーなどで汚れを落とします。WAKO’Sの「マルチフォーミングクリーナー」はムース状のクリーナーで、汚れが飛び散らずに汚れを絡め取ってくれるので便利です。

ブリヂストンサイクルの「グリーンドライブ ウォータレスマルチクリーナー」もおすすめです。

リンク: グリーンドライブ ウォータレスマルチクリーナー | その他 | オプションパーツ | ブリヂストンサイクル株式会社

次に、絡め取った汚れをマイクロファイバーウェスに移すイメージで、しっかりとチェーンを拭き取っていきます。

これで、チェーンの洗浄は完了。

ご覧のとおり、ピカピカです。

錆びてしまったチェーンをきれいにする

一度錆が出たチェーンは、根本的には元に戻りません。ですから、錆びさせないように日頃から気を付けたいところですが、もし錆が出てしまったら、まずは錆を落とします。

このとき、錆び落としなどは使わずに、いったん油で錆を湿らせて、その錆をこそぎ落とすようにしましょう。

こんな時の強い見方がコレ。

WAKO’Sの「ラスペネ」です。ちなみに、ラスペネは(ラスト=錆び、ペネトレーション=浸透)の造語だそうです。

ラスペネは、いわゆる浸透性潤滑剤です。主に錆びたネジ山に浸透して緩みやすくする用途に使われるのに加えて、高性能な潤滑剤としても効果を発揮します。

これを、チェーンにまんべんなく吹き付けます。しっかりと吹き付けられたらペダルを回してチェーンを回転させましょう。ラスペネには錆び取り成分が入っていますので、チェーンが動くことで錆が取れていきます。しつこい錆なら、しばらくそのままで乗車し、ある程度錆が取れてきたころを見計らって、先ほどのチェーンの洗浄を何回か行うことで、だいぶ回復させることができます。

ラスペネの代用品としては、ホームセンターなどでも購入できる「KURE 5-56」のような浸透性潤滑剤が使用できます。

チェーンを潤滑する

しっかりとチェーンを洗浄することができたら、今度は潤滑です。お気に入りのチェーンオイルをたっぷりと注油します。

現在市販されているチェーンオイルのほとんどは、「水置換性」という性質をもっていますので、極端に言えば雨に濡れたままでも弾かれることなく、しっかり浸透していきます。

エアゾールタイプの場合は、飛散しないよう、写真のようにウェスなどで塗布する場所を覆いながら注油します。

点眼タイプの場合は、ローラーのひとつひとつに1~2滴を注油します。

ちなみにブリヂストンサイクルからも「グリーンドライブ ハイパフォーマンスチェーンルブ」という高性能なチェーンオイルが発売されています。

リンク: グリーンドライブ ハイパフォーマンスチェーンルブ | その他 | オプションパーツ | ブリヂストンサイクル株式会社

注油が終わりましたら、次は拭き取りです。

たっぷりとチェーンに注油することは大切ですが、そのままでは「こてこて」の原因を作ってしまいますから、ペーパータオルやウェスで余分なチェーンオイルを拭き取ります。ローラー内部にのみオイルが残っているのがベストな状態なので、サッと拭き取りましょう。

自転車専用のケミカルブランド「FINISH LINE(フィニッシュライン)」の「1ステップ クリーナー&ルブリカント」も、便利なアイテムのひとつ。

リンク: FINISH LINE フィニッシュライン

これ1本で、チェーンの汚れを浮かせて拭き取るだけでなく、潤滑も同時に行ってくれます。面倒なチェーン洗浄と潤滑が、短時間で終わるというわけです。


これで、チェーンの潤滑が完了しました。

チェーンの洗浄と注油は、だいたい200㎞~300㎞ごとに行っていただくのが理想的です。マメな洗浄と注油を行うことで、チェーンやスプロケット(後ろのギア板)の寿命を飛躍的に伸ばしてくれます。

それでもチェーンの寿命はありますので、定期的に自転車店で点検してもらい、消耗が確認された場合は交換してください。

関連記事: 自転車を快適に使い続けるために、消耗部品をきちんと交換しよう – BRI-CHAN

というわけで、ぜひ皆さんも一度、チェーンのメンテナンスにチャレンジしてみてください!

text&photo_Andrew Yamaji(drawer)

【講師紹介】

山路 篤(やまじ・あつし)

「drawer(ドゥロワー)」代表。工具メーカー、完成車メーカーを経て2010年に自転車業界に特化した人材育成を手がける「drawer(ドゥロワー)」を設立。2016年12月に「drawer THE BIKE STORE」を神奈川県大和市にオープン。BRIDGESTONE ANCHORやBRIDGESTONE GREEN LABEL(CYLVA、CHERO、ORDINA)の取り扱いあり。

・drawer(ドゥロワー)
リンク: drawer THE BIKE STORE- ドゥロワー ザ・バイクストア – | – ドゥロワー ザ・バイクストア –


協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社