1月も今日で終わり、さすがにお正月気分は抜けてきたとは思いますが、寒い冬がまだしばらく続きます。そんな季節のうちに、自転車のお手入れなどいかがでしょう。
今回は愛車のメンテナンスを行う上でもっとも重要であり、そして穴に落ちてしまいやすい最初の関門とでも言いましょうか。「自転車のメンテナンスをするにあたって何を準備すればいいのか?」を考えてみましょう。
BRI-CHANでも、掃除からタイヤ交換、チェーンの洗浄や注油など、メンテナンスに関するさまざまな情報を発信していますが、いざやろうと思ったときに、何から準備すればいいのか?はたまたどこまで準備すればいいのか?
なじみのサイクルショップにはたくさんの工具が並んでいて、メカニックはそれらを使っていとも簡単に自転車のメンテナンスを行っています。では、それを全部揃えないといけないのでしょうか——?
何をするのか決めよう
はじめに、自分でやることとショップに任せることを分けてしまいましょう。やはりどんな方でも徐々に階段を登っていくほうが入りやすいですから、まずはひとつの区切りとして、次の4つのメンテナンスが自分でできるようにしてみましょう。
- ボルトの締め付けトルクの管理
- ブレーキパッドの交換
- ブレーキ、シフトケーブルの交換
- チェーンの交換
つまり、この4つのメンテナンスができるように準備ができていればよいわけです。
では、ズバリ皆さんが準備するべき工具をご紹介します。
実は、この4つがあればすべて作業が可能です。もちろんご自身の自転車に合わせてサイズやハンドルの形状などを適宜変える必要がありますが、原則的にこの4種類の工具があればよいのです。
では、4種類の工具それぞれを掘り下げていきましょう。
六角レンチ
ヘックスレンチ、ヘキサゴンレンチ、アーレンキー、六角棒レンチ、六角レンチ。これらは、すべて同じ工具を指しています。ヘックスやヘキサゴンは「六角、六角形」を意味しており、円筒形の頭部に六角形の穴を設けた「六角穴付きボルト(キャップスクリュー)」に対応した工具です。
六角穴付きボルトと六角レンチの組み合わせは、工具とボルトの接触面積を増やし、安全かつ確実にネジを回すことができるのが特徴です。また、スパナで回すネジよりも作業スペースが少なくて済むというメリットもあります。
自転車の場合、ほとんどの部品は六角穴付きボルトを使用して固定されているため、六角レンチはたいへん使用頻度が高い工具です。
一般的にはL型の六角レンチが使用されていますが、主要なサイズをひとつにしたY型、作業性の自由度を高めたT型、また作業性の向上と握り心地の良さを高めたP型などが存在します。
さらに高いトルクが必要ない調整ネジ向けとしてドライバー型や、携帯性を高めた折り畳み型などが存在し、様々な作業用途に合わせてたくさんの六角レンチを見ることができます。
ドライバー
これもまた見る機会が多いだけでなく、実際に自転車以外の場面でお使いになることも少なくないでしょう。
自転車の場合は六角穴付きボルトが多用されていますが、主に調整や軽いトルクでの部品の固定などには、プラスドライバーを使用するネジも使われています。
プラスドライバーにはサイズが存在しますが、自転車の場合は主にNo.2、もしくはNo.1のサイズが必要になります。とくにシフトケーブルの交換の際に行う変速調整などにおいては、ディレーラーの調整にプラスドライバーを使用します(ディレーラーの種類やモデルによって六角穴付きボルトを使用している場合もあります)。
ワイヤーカッター
こちらは、なじみが薄いかもしれません。自転車には主に4本のワイヤーケーブルが使用されています(電動式ディレーラーや油圧式ブレーキ等を除く)。
これらのワイヤーケーブルの内、インナーケーブルと呼ばれる細いワイヤーケーブルは「より線」でできており、一般的なペンチやニッパーなどのように刃と刃が合わさることによって対象物を押し切る工具は、数本の線を撚(よ)って編んでいるワイヤーケーブルの切断には不向きです。
ワイヤーカッターは、ワイヤーケーブルの切断に特化した設計となっており、きれいな切断面を確保するだけでなく、ワイヤーケーブルがほつれにくいのも特徴です。もちろんアウターケーブルも切断可能なため、ワイヤーカッターがあれば、ブレーキと変速用のインナーケーブルとアウターケーブルすべての切断が可能です。
チェーンカッター
4つの工具の内、もっとも専門性が高い工具がチェーンカッターです。カッターといっても切断するものではなく、プレートとピンで構成されているチェーンのピンを押し抜くことでつながれたリンクを外してチェーンを切断するための工具です。
一般的にはピンを押し出す、または押し入れることによってチェーンの切断を行いますが、ピン以外の方法で接続を行う「コネクター方式」の場合、コネクターをつまむような作業ができるプライヤー状の工具もチェーンカッターとされています。
いかがでしたか?
メンテナンスに挑戦しようと思い立っても、とかく要らないものまで買いそろえてしまっては宝の持ち腐れ。もちろんセットで購入した方がいくらかはお買い得なのですが、ひとつずつステップアップしていく方が、ひとつの工具に対しての理解がより進むのではないかと思います。
4つの中からさらにひとつに絞るならコレ
さて、この4つの工具の中からさらに「いちばん最初に手に入れるべきものは?」と問われたら、間違いなく六角レンチであることは確かです。
メンテナンスという意味ではどの工具も必須ですが、普段から行うサドルの高さやハンドルの角度などを変更など、使用頻度が圧倒的に高いのが六角レンチです。
例えば「サドルを5mm高くしたい」というときに、自分でその作業ができるとすれば、わざわざショップにお願いする必要はありません。まずはお気に入りの六角レンチ探しから始めてみてはいかがでしょうか?
とかく工具やメンテナンス話となると、マニアやエキスパート向けの話になりがちですが、そんなことはありません。簡単な調整やお気に入りのアクセサリーの交換や取り付けなどが自分でできるようになると、自転車のある暮らしがより楽しく感じられることでしょう。 ぜひお試しください。
text&photo_Andrew Yamaji(drawer)
【講師紹介】
山路 篤(やまじ・あつし)
「drawer(ドゥロワー)」代表。工具メーカー、完成車メーカーを経て2010年に自転車業界に特化した人材育成を手がける「drawer(ドゥロワー)」を設立。2016年12月に「drawer THE BIKE STORE」を神奈川県大和市にオープン。BRIDGESTONE ANCHORやBRIDGESTONE GREEN LABEL(CYLVA、CHERO、ORDINA)の取り扱いあり。
・drawer(ドゥロワー)
リンク: drawer THE BIKE STORE- ドゥロワー ザ・バイクストア – | – ドゥロワー ザ・バイクストア –
協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社