自転車とともに楽しむライトな撮り鉄

サイクリング中に線路と並行するような場面があると、そのまま通り過ぎるのではなく、列車にカメラを向けたくなるときがあります。そして、何度かやってくる列車を撮っていると、ふと「鉄道を撮るって、けっこう面白いな」と思う瞬間があります。

@nadokazu

今回は、いわゆるガチではないけれど、カメラを携えてサイクリングをするのが好き、そして鉄道を撮るのも結構好き——そんなBRI-CHAN編集部・須貝と、BRI-CHANのカメラ・写真ネタではおなじみの「などかず」の2名で「サイクリング×ライトな撮り鉄」について話します。

鉄道を撮るのって意外と楽しい

須貝:私は世の中一般からすると十分に鉄道好きと言うか、いわゆる「鉄分が多め」というタイプの人間だという自覚はあるんだけど、かといって頻繁に撮り鉄するほどかというと、そうでもないんです。でも、走ってる列車を撮るのって、結構楽しいと思いませんか? これ、なんででしょうね。などかずさんは私よりもっと、鉄道そのものに対する興味関心は薄いはずだけど、結構撮ってますよね?

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などかず:確かに私の場合、鉄道に対してそこまで強い興味があるわけではないんです。当然、子供の頃に一度は通る道ですけどね。でもやっぱり、自転車はもちろん、飛行機、船、クルマ、そして鉄道にしても、永遠の少年は乗り物が大好きってこと。

それに、鉄道写真がいわゆる「動きモノ」であることも、魅力のひとつでしょうね。走行している列車は時速数十キロで移動しており、接近してから走り去るまでの短い時間の中で、一瞬のチャンスを捉える醍醐味と楽しさがあります。

動いている被写体を撮ったときに湧き上がる感情は、写真撮影の根源的な喜びのひとつにほかなりません。

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須貝:ああ、なるほど。「動いているものを写真に撮りたい」っていう欲求か。もちろん、この風景がいいとか、車両がかっこいいとか、日常生活の1シーンを切り取りたいとか、動機はいろいろあるんだろうけど、動きものを撮りたいっていう気持ち、確かにある。

鉄道は(ガチにならなければ)被写体として非常に手頃

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などかず:「写真を撮ること」を楽しみたいと思ったときに、鉄道は非常に魅力的な被写体のひとつだと思います。被写体のサイズと距離感が絶妙で、標準レンズの焦点域で十分にカバーができるじゃないですか。ミラーレス一眼のエントリーモデルとキットレンズの組み合わせはもちろん、それこそコンパクトデジカメやスマホでだって、十分に楽しめちゃう。

しかも、トラブルさえ発生していなければ、被写体は「時刻通り」「決まった場所に」「間違いなく」来てくれるでしょう?

須貝:まあ都市部とその郊外ならではということは言えるかもしれないけれど、頻繁にやってきますもんね、しかも被写体のほうから進んで。

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などかず:被写体が、野鳥だったらどうでしょう。枝の間を縫って素早く移動する10cm前後の小さな被写体を、何メートルも離れた場所から撮影するわけです。レンズの明るさと焦点距離、そしてカメラボディのAF性能・高感度性能・連写性能が撮影の成否に大きく関わって、フラッグシップモデルに近いカメラと100万円を余裕で超えるレンズを揃える方も少ない世界です。それだけの機材を揃えて撮影に挑んでも、被写体は神出鬼没で、1日待っても「撮れ高ゼロ」というケースだってザラにあります。

SUGAI
2013年に発売された光学20倍ズームのコンパクトデジタルカメラ
「SONY Cycbershot DSC-WX300」で撮った1枚

須貝:以前、近所に冬になるとメジロが集まる木があって、よく写真を撮りに行ってたんですが、マイクロフォーサーズの中級機と28〜280mm相当のいわゆる「高倍率ズームセット」のキットレンズでは、ちょっと厳しいなという感じでした。もちろん、標準ズームよりはずっとよいけれど。

しかも、そのメジロが集まる木が伐採されてしまって。そうなると、別のメジロが群れるポイントを見つけるのに一苦労でした。それに比べれば鉄道写真は、ずっとインスタントに楽しめますよね。

サイクリングと撮り鉄は相性が◎

須貝:私は最初にも言ったように、などかずさんよりは鉄分多めなので、頻繁ではないにしても、撮り鉄目的で自転車を使ったこともあります。何がよいって、撮影ポイントの移動効率の高さなんですよね。撮影が主目的ではないときでも「ちょっとあの撮影ポイントに寄ってくか」みたいなことができるし。

などかず:列車全体がキレイに収まって、背景もスッキリ。そんな写真が撮れる場所は、駅から徒歩で移動するには厳しい距離で、駐車場も近くには無いというケースが珍しくないですからね。駐車場や最寄り駅から自転車を使って撮影ポイントまで移動すれば、効率がよくて楽です。

そして自転車を分解して専用の袋に収納して持ち運ぶ「輪行」で寄り駅まで移動すれば、「鉄道旅行」と「鉄道写真の撮影」の両方が一度に楽しめるので、まさに一石二鳥ですね。ローカル線だと「サイクルトレイン」を実施している場合もあるので、そういうのを活用するのもアリでしょう。

須貝:別に遠くまで行かなくても、近場のポタリングを兼ねて、細かく移動しながら撮っても楽しめるのがよいですね。以前になどかずさんに出ていただいた記事でも書かれているけど、徒歩以上・クルマ未満という自転車の特性が、ばっちりハマります。

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サイクリング×撮り鉄のときの装備

などかず:ちょっと話は変わるんですけど、私の場合、サイクリングしつつ写真撮影を楽しむ際は、カメラをストラップでたすき掛けにして自転車に乗ることはしないと決めているんです。転倒時にカメラやレンズが直接ダメージを受けるという点もあるのですが、なにより自身の身体的な被害を大きくする要因でしかないと思っていて。

SUGAI
ブリヂストンのクロスバイク「XB1」と小田急線

須貝:わかります。私はよくBRI-CHANの記事で写真を撮りながらサイクリングする記事を書いていることもあって、絶対にたすき掛けしないということはないけど、カメラは極力バッグに入れています。自転車にまたがったままパッと撮るのはポケットに入れたスマホに任せて、カメラはちょっと面倒でもいちいち出し入れしている。

などかず:個人的に最適解だと考えるのは、フロントバッグへの収納です。運びやすく、取り出しやすく、転倒時に身体やカメラへのダメージもミニマムであることが期待できるので。フロントバッグはカメラにダメージを与えるという声もありますが、個人的にはインナークッションを使うことで、今まで問題は生じていません。それに、カメラの心配よりも自分のケガに対するリスクヘッジが重要です。

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ほかに愛用しているのが、すでに旧製品なんだけどモンベルの「ライト フォトショルダーバッグ L」ですね。ウエストベルトを装備しているので、走行中にバッグが暴れないのがよいです。しかも、軽量ながらフルサイズの一眼デジカメと、レンズが収納できる絶妙のサイズ感なんですよ。

須貝:私はメッセンジャーバッグとインナーバッグの組み合わせが、いちばん多いかな。モンベルの軽量カメラショルダーがモデルチェンジした「カメラ ライトショルダーバッグ」というのがあって、フラップを開けてワンアクションでカメラが取り出せるようになっているので、それが欲しいなとは思っています。

それぞれのおすすめ撮影地は?

須貝:などかずさんにとって、サイクリング×撮り鉄のお気に入り路線やポイントみたいなのってありますか? 私は、地元を走る小田急線の有名撮影ポイントの一つが駅から遠いので、そこに行くときは決まって自転車です。

あと、旅先に路面電車が走っていて、かつシェアサイクルがあると、路面電車の撮影がはかどります。富山の路面電車とか、台湾の高雄を走るLRTとか。

などかず:私の個人的なお気に入りは、伊豆箱根鉄道の駿豆線です。始発の三島駅には新幹線や東海道線でアプローチが容易であることはもちろん、恒常的にサイクルトレインを実施しているのが大きなポイント。三島駅に着いたら自転車を組み立てて駿豆線に乗車し、撮影ポイント近くの駅で電車を降りたら、そのまま走り出せます。

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駿豆線沿いには富士山をバックにした撮影地など、撮影ポイントがたくさんあるし、車両のタイプが多彩で、ラッピング電車も複数走行しているんです。そして、沿線には西伊豆スカイラインを始めとした走りごたえのあるルートと、狩野川沿いや内浦地区などゆるく走って楽しめるルートの両方が備わっています。沿線でサイクリングする楽しみも、多彩です。

ほどほどでも、楽しい。

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などかず:鉄道は想像するよりは撮影難易度が低めで、必要な機材も手頃で済みます。動きモノの撮影を楽しむには、段違いに入りやすい被写体だと言い切れる。もちろん「こだわり始めたらキリがなくなる」という点は、どの被写体もまったく同じですけど。

須貝:個人の趣味なので、ほどほどのところで、気軽かつ安全に楽しめるのが理想ですね。人に迷惑をかけたりすることもなく。

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などかず:ふだん通勤・通学で利用している身近な列車たちを撮影するだけでも、十分に撮影の醍醐味を体験できます。そこそこの列車本数がある幹線沿いであれば、限られた時間の中でもたくさんの撮影チャンスがありますから、サイクリングと撮影を効率良く楽しめるのではないしょうか。

須貝:ハマりすぎない程度に、ハマる——そんな感じですかね。

text&photo_などかず(@nadokazu)、Gen SUGAI(CyclingEX

などかず(@nadokazu)プロフィール:職業はWebプロデューサー。週末はサイクリングと写真撮影を楽しむ。家族サービスの時間を確保するために、サイクリングは早朝が多いというお父さん。Instagramアカウントはこちら

協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社