1964年に、東京でオリンピックが開催されました。そして2020年にふたたび、東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。オリンピック・パラリンピックが開催されると、その都市には有形無形のレガシー、つまり社会的遺産が残ります。
1964年から54年が経ち、そして2020年まであと2年となった今は、新旧レガシーの過渡期にあると言えるでしょう。「1964の遺産」と、今まさに準備段階にあり、やがてレガシーとなる「2020の現場」を、クロスバイクで辿ってみました。
●東京体育館
今回スタート地点に選んだのは、JRの千駄ケ谷駅。
駅の目の前は、ご存知「東京体育館」です。
初代の東京体育館は1954年に建設され、1964年の東京五輪では体操と水泳の会場となりました。現在の建物は槇文彦の設計により1990年にオープンしています。2020年の大会では、卓球の会場として使用される予定です。
スポーツだけでなく、コンサート等のイベント会場としてもおなじみですね。
情報源: 東京体育館|競技会場等|大会情報|2020年大会開催準備|東京都オリンピック・パラリンピック準備局
情報源: 東京体育館
●新国立競技場
東京体育館の背後にクレーンがにょきにょきと出ていましたが、それはもちろん、こちらの建設現場のものです。
明治神宮外苑競技場の跡地に旧国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)が建設されたのは1958年。同年に開催されたアジア大会の会場となったほか、1964年の東京五輪におけるメインスタジアムとなりました。陸上、サッカー、馬術が開催されています。
2014年に閉鎖され、現在は2020年の大会におけるメインスタジアムとなるべく、新国立競技場の建設が進んでいます。
東京体育館の敷地から眺めてみますが……
スタジアムはやっぱり巨大ですね。
紆余曲折ありましたが、完成が楽しみです。
情報源: 新国立競技場(オリンピックスタジアム)|競技会場等|大会情報|2020年大会開催準備|東京都オリンピック・パラリンピック準備局
情報源: トップページ | 国立競技場 | JAPAN SPORT COUNCIL
情報源: トップページ | 新国立競技場 | JAPAN SPORT COUNCIL
●ホテルニューオータニ
新国立競技場の建設現場から、迎賓館の前を通り、やってきたのは紀尾井町。
外堀通り側から眺めるニューオータニ。左側が「ザ・メイン」、右側の白い建物が「ガーデンタワー」、その奥に「ガーデンコート」が見えます。
1964年にオープンした「ザ・メイン」は、いつ見てもさすがの風格。そう、1964年の東京五輪に合わせてオープンしたホテルのひとつなんです。地上17階建てで、日本における高層ホテルの先駆けなんだとか。ザ・メインの中はいくつものお店が入っているのが特徴で、エントランスからガーデンタワーやガーデンコートのほうへと通り抜けるだけでも、重厚な雰囲気を感じることができます。
そしてニューオータニが建設される際に生まれたのが「ユニットバス」。1,000室以上ある巨大ホテルを効率よく建設するために考案されたのでした。
ちなみに、ニューオータニのザ・メイン前には駐輪場があります。
ごらんのような環境なので、スタンドが付いた自転車のほうが駐めやすいです。
情報源: ホテルニューオータニ | 公式サイト
情報源: ティドビット ~水まわりのまめ知識~ ユニットバスルームの発祥は? :TOTO
情報源: 平成28年度「建築設備技術遺産」に TOTOミュージアム所蔵の「初代ユニットバスルーム」が認定 2016年05月20日 : ニュースリリース : TOTO
●秩父宮ラグビー場
ニューオータニ再び神宮外苑へと戻り、秩父宮ラグビー場へとやってきました。
まずはいちょう並木側から。個人的に、この眺めが好きなんですよね。
秩父宮ラグビー場は1947年に開設されていますが、1964年の東京五輪ではサッカー競技の会場でした。
秩父宮ラグビー場は神宮球場と一体的に再開発される予定となっており、現在の姿を見ることができるのも数年のうちとなるようです。
情報源: ホーム | 秩父宮ラグビー場 | JAPAN SPORT COUNCIL
●五輪橋
原宿駅前にやってきました。
渋谷側に、山手線をまたぐふたつの橋がかかっています。右側が「神宮橋」で、左側が「五輪橋」。このあと紹介する代々木第一・第二体育館をはじめとする代々木エリアの五輪施設と、国立競技場など神宮外苑周辺の五輪施設を結ぶ道路にかけられたのが「五輪橋」です。
私が10代の頃、この橋はずいぶん殺風景だったように思うのですが、90年代前半に装飾がほどこされ、きれいになっています。
地球儀が飾られています。
競技をイメージしたデザイン。
これは、なんでしょうね?
●国立代々木競技場(代々木第一・第二体育館)
1964年の東京五輪で水泳やバスケットボールの会場として用いられたのが、代々木第一・第二体育館として知られる「国立代々木競技場」です。体育館の建物は吊り屋根構造が特徴で、丹下健三氏が設計したことでも有名です。
2020年の大会でもハンドボール等で用いられる予定で、現在は改修工事中につき、フェンスに囲われています。
さすがに古さを感じますが、そのデザインはまったく色あせることがありません。
1964から2020へ。再度、大舞台を迎えようとしています。
一度、五輪橋のほうに戻り、歩道橋から撮影してみました。
情報源: トップページ | 代々木競技場 | JAPAN SPORT COUNCIL
情報源: 国立代々木競技場|競技会場等|大会情報|2020年大会開催準備|東京都オリンピック・パラリンピック準備局
情報源: 国立代々木競技場 | モダニズム建築 | 丹下都市建築設計
●NHK放送センター
国立代々木競技場に隣接して、NHK放送センターやNHKホールが建っています。
この日はスタジオパークの無料公開デーで、にぎわっておりました。
NHKのどこがレガシーなのか?
実は、1964年の東京五輪における放送センターとして建設されたんですね。
リンク: 放送センターの地図 | NHKについて
●渋谷公会堂
NHK放送センターのお向かいといえば渋谷区役所と渋谷公会堂ですが……
区役所と公会堂ともども、建て替え工事中です。
渋谷公会堂は1964年に完成し、その年の東京五輪で重量挙げ競技として使用された、オリンピックレガシーだったのです。
情報源: 渋谷公会堂 – 東京オリンピック1964 – JOC
●代々木公園
代々木エリアに1964年東京五輪の会場施設が集中しているのは、この土地が戦前は陸軍の代々木練兵場であり、終戦後は米軍に接収されて「ワシントンハイツ」という宿舎だったものが、日本に返還されて会場として活用されたからです。
旧ワシントンハイツの戸建て住宅は、選手村宿舎として活用されました。選手村が代々木公園となった現在も、1棟だけ残っています。
1964年の東京五輪当時、この中で選手が過ごしていたんですね。
ちなみにこの宿舎は、オランダ選手団が利用したそうです。
●国立オリンピック記念青少年総合センター
1964年大会の選手村宿舎のうち、新たに建設された集合住宅棟を活用したのが、代々木公園に隣接した「国立オリンピック記念青少年総合センター」です。
いわゆる研修・合宿のための施設で、いつも多くの人で賑わっています。
建物は老朽化に伴って、だいぶ建て替えられたようです。
情報源: 国立オリンピック記念青少年総合センター | 独立行政法人 国立青少年教育振興機構 国立オリンピック記念青少年総合センター
●おわりに
ところで、オリンピック記念青少年総合センターの最寄駅は、小田急線の参宮橋ですが、駅前にこんなものがありました。
境界杭に「陸軍所轄地」と書かれています。この一帯が代々木練兵場だった時代の名残なのです。
というわけで、駆け足でしたが、1964年大会の遺産と、2020年大会へ向けて準備が進む現場をクロスバイクでたどりました。今回訪ねることができたのは一部ではありますが、1964年から50年以上が経ち、当時の建物は徐々に失われつつあることを実感できました。一方で、いろいろあった新国立競技場の工事も、着実に進んでいます。2020年の東京がどんな景色になっているのか、あらためて楽しみになりました。
情報源: JOC – 東京オリンピック1964 | メモリアル・プレイス
●今回使用した自転車 CYLVA F24(シルヴァ F24)
価格 52,800円(税別)
製品情報 https://www.bscycle.co.jp/items/commuting/greenlabel/cylva/index.html
※3年間盗難補償付き
今回は走行距離が短いので、クロスバイクの「CYLVA F24」を使用しました。少し立ち止まって写真を撮って、また走って……という繰り返しだと、スタンドのついた自転車が便利です。
text&photo_Gen SUGAI(CyclingEX)
協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社
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