自転車の乗りこなし方を“達人”に聞いてみた:段差&下り坂編

この春、新たな自転車生活を始める人も多いと思います。中には「実は自転車に乗るのが久しぶり」という人もいることでしょう。

今回は、初めてスポーツ自転車に乗る人や久しぶりに乗る人のために「怖くない」乗りこなし方を紹介します。講師は「自転車の達人」、リンケージサイクリング代表・田代恭崇さん(2004年夏季アテネ五輪・自転車ロードレース日本代表選手)です。

BRI-CHAN編集部でのミーティングで「初めての頃に怖いと思ったことは何か」を話し合っていた際に出てきたキーワードが「段差」と「下り坂(とくにブレーキング)」でした。今回はその2点に的を絞ってみます。

また「そもそも正しい乗り降りのしかたができているか」も大事ですので、そこから田代さんに教えてもらいましょう。

乗り降りや発進停止のキホン

というわけで、普段使いにぴったりなBRIDGESTONE GREEN LABELのクロスバイク「CYLVA F24(シルヴァ F24)」を使って、まずは乗り降りと発進・停止からいってみましょう。

乗り出す前にまず確認したいのが、後ろのギアの位置です。ギアが重たくなっていると、スムーズに漕ぎ出すことができません。あらかじめ軽めの位置にギアチェンジしておきましょう。シフトレバーを操作して、ギアが変わるまで後輪を回転させることを忘れずに。

いよいよ自転車にまたがります。まず、自転車の左側に立って、後方を確認しましょう。そして、前後のブレーキレバーを握って、自転車が不意に動いてしまわないようにします。

ブレーキレバーには、しっかり指をかけましょう。ブレーキをかける力は、両手に均等で。これは、またがるときはもちろん、走行中でも同じです。

さて、ブレーキレバーを握った状態で、後方を確認しながら自転車にまたがりましょう。そして、漕ぎ出しやすいように右側のペダルが上になるように調節します。右側のペダルが下側になっていると、発進しづらくなってしまいます。

改めて後方確認をして、問題なければ右足から踏み込んで、発進しましょう。このとき、しっかり前を向くことがポイントです。下(足元やハンドル)を見ていると前方不注意となるだけでなく、ふらついてしまいます。

停止するときはブレーキをかけて減速し、止まりきる少し前に左足をペダルから離し、サドルの前方に降りて、そのまま左側に足を付きましょう。自転車は左側に傾けて大丈夫ですよ(右側は後方から車両が通過するので気をつけましょう)。

また、止まる前にギアを軽くしておくクセをつけておきましょう。そうしないと、再発進するとき重たいギアになってしまいます。

段差を乗り越えるにはどうする?

続いて、段差の乗り越えについて紹介ましょう。ここで想定しているのは、車道からコンビニエンスストアや駐輪場などに入る際に、歩道などのスロープにある段差を通過するケースです。

下の写真では基本的に「段差を乗り越えるとき」の動作で説明していますが「段差を降りるとき」や「路面の継ぎ目を通過するとき」なども基本的には同じです。前輪が段差に乗るときどうしているか、降りるときはどうしているかに注目しましょう。

よくない例

まずは「よくない例」から。乗り手の腕が完全に突っ張ってしまっているのがわかりますね。また、サドルの上にはどっしりと体重がのっかっています。この状態では腕にもお尻にも衝撃が加わり、痛い、怖いということになってしまいます。

こうすれば怖くない!痛くない!

続いて、田代さんのお手本です。まず、ペダルの位置に着目してください。左右水平の位置になっています。これは、左右のペダルに均等に体重を乗せているのです。

上半身は腕が少したたまれていて、力を抜いた状態で姿勢を低く重心をやや後ろにしています。こうすることでハンドルに体重が乗りませんし、何かあった際に自転車を操作する余裕が生まれます。

そして、両足からペダルにしっかり体重を乗せることができれば、お尻からサドルにかかる体重は減ります。そうすることで後輪が段差を通過するときの衝撃が少なくなり、お尻が痛くなることもないでしょう。

段差を通過するとき腕やお尻が痛いということは、前輪や後輪に大きな衝撃が加わっている証拠です。あまり衝撃が大きいと、タイヤがパンクしてしまうリスクがあります。逆に言えば、痛くないようにすることは、自転車をいたわることでもあるのです。

無理して乗り越えるのはやめよう

これくらいの高さがあると、そのまま乗り越えるのは達人でも「怖い」

段差を乗り越える——といっても、上の写真のような高さになると、そのまま通過するのは危険です。いったん降りるようにしましょう。

段差への進入角度に気をつけよう

段差に上がるときは、角度にも注意しましょう。角度が浅いと前輪がすべって危険です。なるべく角度をつけてあげるとよいでしょう。ただ、角度をつけたいと思うあまり、車道側にふくらんでしまっては本末転倒。状況に応じて、無理せず一度停止し安全確認をしてから再発進したり、降りて押すといった臨機応変さも大事です。

下り坂ブレーキの怖さを克服!

続いて、下り坂でのブレーキについて紹介しましょう。

なぜ下り坂でブレーキをかけると、身体が前につんのめりそうに感じますよね。下り坂の途中で止まるときには、実際につんのめって怖い思いをしてしまうこともあるかもしれません。

では、どうすれば克服できるでしょうか。

乗車姿勢のキホン@下り坂

「下り坂で怖いと思うのは、エネルギーが前へ前へと行こうとするから」と、田代さん。まずは下り坂での基本姿勢を確認しましょう。

注目したいのは、身体の重心を心もち後ろに置いていること。そして、腕は突っ張らず余裕を持たせており、ペダルの高さは左右同じ位置にあります。こうすることで、前へとつんのめりそうになることを防ぐことができます。

下り坂に限らず、平地でもブレーキングでのつんのめる感じが怖いという人は、止まる際にこの姿勢を意識してみてください。

ふたつの写真を見比べてみよう

上のふたつの写真を見比べてください。

左の写真はよくない例で、腕が完全に伸びきっており、ペダルは右側が下になっています(右側のペダルにしか体重がかかっていません)。重心は前へ前へと行こうとしていて、頭の位置がハンドルのほぼ真上になっていることがわかります。目線も、少し下を向いていますね。

右の写真は、田代さんのお手本です。左右両方のペダルにしっかり体重が乗っていて、腰も少し引き気味で重心が前に行くのを防いでいます。頭の位置が、左の写真よりだいぶ後方であることがわかるでしょう。腕もリラックスしていますし、目線も左の写真よりは上がっています。

まとめ

今回は乗り降りの基本と、街中でありがちな怖さを感じるシチュエーションとして「段差」と「下り坂」にフォーカスしてみましたが、いかがでしたか? みなさんもぜひ、普段自転車に乗る際に意識してみてください。

また、田代さんが代表を務める「リンケージサイクリング」では、楽しくサイクリングしながらスポーツ自転車の基本操作が学べるプログラムが用意されていますので、詳しく教えて欲しい!という人はぜひチェックしてみてください。


講師:田代恭崇(たしろ・やすたか)

神奈川県藤沢市、江ノ島のすぐ近くで体験型サイクリングプログラムを提供している「リンケージサイクリング」を主宰。2004年夏季アテネ五輪・自転車ロードレース日本代表選手。

リンケージサイクリングの田代 恭崇さん

情報源: LINKAGE CYCLING

text&photo_SUGAI Gen(CyclingEX

取材協力:リンケージサイクリング

協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社