クロスバイクの存在価値とは優れた「汎用性」である。乗り手の技量に関わらず、通勤、通学、買い物、ポタリング、フィットネス、ツーリング……そういった様々なシーンにまんべんなく対応できることこそ、ロードバイクともMTBとも異なるクロスバイクならではの特性だ。そういう意味において、2021年12月発売予定のブリヂストン「XB1(エックスビーワン)」はまさにクロスバイクの王道と呼ぶに相応しい一台だ。
(写真・文:佐藤旅宇)
アルミ製の軽量なフレーム&フォークに3×8段の24段変速、700Cホイールというクロスバイクの基本を抑えつつ、サイドスタンドやLEDライトといった日常使いするうえでのマストアイテムを標準装備している。タイヤは乗り心地や安定性を重視し、やや太めの700×32Cサイズ。異物などからチューブを守るプロテクションベルトを内蔵した耐パンクタイヤだ。
XB1はスポーツサイクルならではの高い走行性能を、日常からレジャーまで幅広く活用できるよう最初から整えられたパッケージングとなっている。
走り出してまず印象的なのは、この価格帯の自転車らしからぬ動きの「軽さ」だ。ペダルを踏み込んだときの反応の良さに加えて、ハンドリングもヒラヒラとじつに軽快。いかにもスポーツサイクルらしい人馬一体感がチョイ乗りでもはっきりと感じられる。
車重は11.7㎏(490㎜サイズ。標準装備品のサイドスタンド、ライト、ベル、前後リフレクター、ホイールリフレクター590gを含む)。軽快車(いわゆるママチャリ)と比較すれば圧倒的に軽いが、現代のクロスバイクとしてはとくに驚くような数値でもない。もっと軽いモデルは他にも沢山あるだろう。前述したようにXB1は耐パンクタイヤを標準装備しているが、走りの軽さという観点ではこれはむしろ不利な要素だ。
自分の経験上、自転車の体感的な軽さというのは1~2㎏程度の車重の違いよりも、車体の剛性と精度が大きくものをいう。いくら軽量な車体でも、力をかけたときに車体がたわんでしまうようでは軽快さは感じられない。ママチャリで思いっきり立ち漕ぎをしてみるとその理屈が理解できる。剛性の乏しい車体に大きな力を加わえると、力が発散して思ったように前に進まなくなるのだ。
XB1は乗り手からの入力を強靭な車体でがっちりと受け止め、頭でイメージした通りの動きをしてくれる。だから俊敏でスポーティーであると同時に非常に乗りやすい。交差点やコーナーを曲がる際も狙ったラインを正確にトレースすることができるので非常に気持ちがいい。
変速機などのパーツは特別高級なものが奢られている訳ではないが、信頼性の高いシマノ製を採用しており、性能やタッチにとくに不足はない。流行りのディスクブレーキではなく、Vブレーキを採用しているところも個人的には卓見だと思った。こういってはなんだが、普通に街乗りやサイクリングを楽しむのであればVブレーキの制動力に不満を感じることはないし、むしろ調整やメンテナンスがしやすいというメリットもある。この価格帯のクロスバイクを選ぶユーザーにとっては、Vブレーキ採用によって車両価格が少しでも下がるなら、そちらの方がありがたいだろう。
試乗車は光の当たり方によって色味が変わる「P.Xマジックブルー」という車体色だった。とても手間のかかった塗装に見えるが、価格は他のカラーと同じ。これはかなりお得である。この手のエントリーモデルには珍しく4つのフレームサイズが用意されていることも良心的だ。一番小さいサイズなら小柄な女性にもフィットするだろう。3年間の盗難補償が付くというのもブリヂストンらしい配慮といえる。
クロスバイクもまたユーザーの志向に合わせてカテゴリー内部で多様化が進んでいるが、XB1は日本における「自転車のある暮らし」を丁寧に突き詰めた、生まれながらの定番モデルだ。
●BRIDGESTONE XB1
価格:64,000円(税込)
撮影車両サイズ:490mm
※2021年12月発売予定
リンク: エックスビーワン | スポーツ向け自転車 | 自転車 | ブリヂストンサイクル株式会社
[2021/12/21 追記]
残念ながら発売が2022年6月の見込みと、大幅に延びてしまいました。
情報源: XB1発売再延期に関するお知らせ|お知らせ 2021|ブリヂストンサイクル株式会社
[2023/1/16]本記事掲載のあと、スペックと価格が変更されています。詳細はメーカーのWebサイトでご確認ください。また、2023年モデルを写真で紹介する記事を掲載しました。下記リンクからごらんください。
text&photo_SATO Ryo(GoGo-GaGa!)
協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社