スポーツ自転車のブレーキには、主にリムをブレーキシューで挟む「リムブレーキ」か、ディスクローターをパッドで挟む「ディスクブレーキ」が使われています。最近では、ディスクブレーキを搭載するロードバイクやクロスバイクが増えてきました。ディスクブレーキには、どんなメリットがあるのでしょうか。
ディスクブレーキにもいくつか種類があるので、それぞれのメリットを見ていきましょう。アドバイザーは、BRI-CHANのメンテナンス記事でおなじみ「drawer(ドゥロワー)」の山路篤さんです。
機械式ディスクブレーキのメリット
ディスクブレーキのうち、ブレーキパッドをワイヤーで操作するものを、一般的に「機械式ディスクブレーキ」や「メカニカルディスクブレーキ」と呼びます。
ブレーキレバーとブレーキキャリパーとがワイヤーで接続されているので、容易に判別可能です。
機械式ディスクブレーキの場合は、次のようなメリットがあります。
雨天時の制動力低下がリムブレーキよりも少ない
リムブレーキのゴム製シューより、ディスクブレーキの金属製パッドのほうが摩擦が大きいため、雨で濡れていてもよく効きます。
そしてこのメリットは、このあと紹介する油圧式ディスクブレーキでも同様、つまり機械式/油圧式に関わらず「ディスクブレーキの基本的なメリット」と言えます。
油圧式ディスクブレーキのメリット
ブレーキレバーとブレキキャリパーをつなぐケーブル(ホース)の中がオイル(ブレーキフルード)で満たされていて、油圧でブレーキのコントロールを行うのが「油圧式ディスクブレーキ」です。
油圧式ディスクブレーキでは、先ほどの機械式ディスクブレーキにプラスして、主に次のようなメリットがあります。
長期間にわたって性能が劣化が少ない
油圧システムが密閉されているので、ちゃんとセッティングされ中のオイル(ブレーキフルード)に問題が起きない限りは、メンテナンスフリーと言えます。プロが見れば「エア抜きが必要」といった状態になったとしても、ブレーキ自体は作動します。
理論上は摩擦抵抗がない
油圧式ディスクブレーキは、機械式ディスクブレーキのようなワイヤーの摩擦抵抗が生じません。したがって操作が軽くなります。
これ関連し、ケーブル類がフレーム内蔵式のとき、ケーブルの取り回しが強引であっても(ワイヤーだと抵抗が増えて動作に問題が起きるレベルでも)動作します。
スルーアクスル化されるとメリットが増える!
スポーツ自転車のホイールをフレームに固定する方式として、主に「クイックリリース」と「スルーアクスル」の2種類があります。ディスクブレーキを搭載したロードバイクやマウンテンバイクでは、ある程度グレードが高くなると「スルーアクスル」が採用される例がほとんどです。一方でリムブレーキモデルや、安価なディスクブレーキモデルは「クイックリリース」がほとんどです。
実は「ディスクブレーキ+スルーアクスル」の組み合わせには、「リムブレーキ+クイックリリース」では得られないメリットがあります。例えば、以下のようなものです。
ホイールの固定が確実(確実に位置が決まる)
クイックリリースは、ホイールを固定する力加減を手で調節します。その調整は、完全に「扱う人次第」です。一方スルーアクスルは「ネジを最後までしっかり締める」という要領であり、誰もが確実に、同じように固定できます。
剛性と強度が高くなる
エンド部に設けられた穴とホイールの中を、アクスルが貫通しています。その構造により剛性と強度がアップします。剛性の高さは、ブレーキングの際にも「車体がしっかりしている」という感覚につながります。
フレームやホイールの設計自由度が上がる
リムの位置にブレーキ台座が必要なリムブレーキモデルよりも、設計自由度が上がります。これにより、ドーロバイクでもワイドなリムと太いタイヤでエアボリュームを確保して乗り心地をよくしたり、より多様な路面状況に対応できるようになりました。700×32Cのタイヤまで装着できるANCHORのロードバイク「RL6D」などは、その好例と言えるでしょう。
このように、ディスクブレーキ+スルーアクスルには、制動力だけではないメリットがあります。
ここまでを踏まえ、ディスクブレーキのメリットをチャートにしてみました。
機械式+QR | 機械式+TA | 油圧式+QR | 油圧式+TA | |
雨天時の制動力確保 | ● | ● | ● | ● |
長期間にわたる性能の維持 | ● | ● | ||
摩擦抵抗の低減 | ● | ● | ||
スルーアクスル化によるメリット | ● | ● |
ディスクブレーキのデメリットは?
もちろん、ディスクブレーキデメリットがないわけではありません。代表的なデメリットは、下記のようなものが挙げられるでしょう。
ディスクブレーキ全体のデメリット
・重量が増加する
機械式ディスクブレーキのデメリット
・ケーブルの取り回しによっては操作が重い。
・時間の経過とともにワイヤーの伸び、錆、異物が入ることなどにより、ロスが大きくなる
・パッドの調整頻度が高い
油圧式ディスクブレーキのデメリット
・機械的な引しろの調整ができない
・制動力の立ち上がりが速いゆえ「急に効く」と感じられる場合がある
・輪行や車載等でホイールを外す必要があるとき気を遣う(→関連記事)
・調整およびメンテナンスがブラックボックスな面がある(ショップに任せるのが確実)
このように、それぞれの方式にメリットとデメリットがあり、勘案した上で「ディスクブレーキのメリットは大きい」とされている——というのが現在の状況です。とはいえ、どちらかが良くて、どちらかが悪いというものではありません。
油圧ディスクブレーキ+スルーアクスルのANCHOR RL6Dに乗れば、その走行安定性の高さやブレーキング時における安心感はとても頼もしく思えますし、リムブレーキのRL3 DROPで輪行サイクリングをすれば、その扱いやすさが魅力に感じます。
もちろん、今回紹介したどんなブレーキであっても(そしてリムブレーキ等の他のブレーキシステムも)、ちゃんと整備されていれば性能を発揮してくれます。その点は安心してください!
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【今回のアドバイザー】
山路 篤(やまじ・あつし)さん
「drawer(ドゥロワー)」代表。工具メーカー、完成車メーカーを経て2010年に自転車業界に特化した人材育成を手がける「drawer(ドゥロワー)」を設立。2016年12月に「drawer THE BIKE STORE」を神奈川県大和市にオープン。BRIDGESTONE ANCHORやBRIDGESTONE GREEN LABEL(CYLVA、CHERO)の取り扱いあり。
・drawer(ドゥロワー)
リンク: drawer THE BIKE STORE- ドゥロワー ザ・バイクストア – | – ドゥロワー ザ・バイクストア –
text&photo_SUGAI Gen(CyclingEX)
協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社