夏のライドとは切ってもきれない、自転車の汗対策

春から自転車通勤を始めた人が、夏が近づき気温が高くなるにしたがって直面するのが「汗」の問題です。今回は、自転車に乗る上での汗対策を考えてみましょう。

自転車は、自分の体を動かして走る乗り物なのです。動く以上は、どうしても汗をかきます。暑い夏にびっしょりと汗をかいた状態で人に会うのは気が引けますし、ニオイや汗冷えも気になります。通勤や通学などではなく趣味のサイクリングであったとしても、あまりに汗だくではカフェにも寄ることができません。

大前提:汗をかくことは正しい

しかし、今さら言うまでもありませんが、気温が高いときに運動をして汗をかくのは、身体の反応としては正しいことです。汗をかいた気化熱によって体温が調節されることは、みなさんよくご存知だと思います。すごく暑い日に、自転車に乗って体を動かしているのに汗が出ない……というのは、熱中症の可能性があり危険です。

それでも、自転車に乗った際の発汗を少しでも抑えたいのであれば、いくつか工夫が必要になってきます。

汗をかくと何が困るか

では、汗をかくと何が困るのか。ちょっと書き出してみましょう。

不快感が高い

汗をかくと、単純に不快感が高まります。また、汗を吸った衣服は皮膚にダメージを与え、それがまた不快感を高めていきます。

見た目がイヤ

朝から汗びっしょりで職場に入るのは、自分も周りもちょっとイヤですよね。

ニオイが気になる

汗をかいたあとに自分の身体が発するニオイを抑えたいと思うのは、当然のことです。

汗冷えしてしまう

汗をかいた状態で冷房が効いた室内に入ると、体温が奪われて体調が悪くなってしまうこともあります。

だいたい、こんなところでしょうか。では、どんな対策があるでしょうか。

着るもので対策する

筆者がいちばんおすすめするのは、着用するアイテムを「速乾性」もしくは「吸湿速乾性」のある素材を使用したもので固めることです。汗が早く乾いてしまえば、体温調節という汗をかく意味を失うことなく、生地が肌にべったりくっつく不快感が減少しますし、汗が残って雑菌によるニオイが生じるのも防ぎます。

職場のドレスコードが厳しめだとしても、アンダーウェアなら実践しやすいでしょう。例えば「モンベル」の「ジオライン クールメッシュ」シリーズのアンダーウェアなどです。下記で紹介しているのはメンズ製品ですが、ウィメンズ製品も豊富にあります。

ジオライン クールメッシュ VネックTシャツ Men’s
価格:2,970円(税込)

photo_モンベル

リンク: モンベル | オンラインショップ | ジオライン クールメッシュ VネックTシャツ Men’s

ジオライン クールメッシュ トランクス Men’s
価格:2,310円(税込)

photo_モンベル

リンク: モンベル | オンラインショップ | ジオライン クールメッシュ トランクス Men’s

リンク: モンベル | オンラインショップ | ジオライン(薄手/クールメッシュ)

また、モンベルからはサイクリング向けの高機能アンダーウェアも発売されています。スポーツバイクに乗る人は、モンベルWebサイトのガイド記事などを参考にしてみてください。

リンク: モンベル | オンラインショップ | アンダーウエア

リンク: モンベル | 自転車ライフを楽しく快適に! 春夏サイクルウエアガイド |

いずれにしても、服装が自由な職場、もしくは自由な服装で出勤して制服に着替えるような場合は、動きやすく、吸湿速乾性のたかいもので身を固めてしまうのがいちばんです。

そして、可能であれば「着替える」のがおすすめ。上半身のインナーだけでも着替えましょう。

スピードを抑えて走る(運動量を抑える)

汗をかかないために、走り方でも工夫してみましょう。

とくに通勤・通学では、時間に追われがちかもしれません。しかし、運動強度が高くならないようにゆったりとしたペースで走行することで、発汗量をある程度は抑えることができます。

本題とは少しそれますが、運動強度を抑えると言う意味では、電動アシスト自転車は夏場にもありがたい存在です。

休憩をはさむ

途中で休憩をとるのも、重要なポイントです。片道30分の道のりであれば、途中の日陰で一息ついて水分補給するくらいでよいでしょう。

休んでいるうちに汗がひくのはもちろんですが、熱中症対策としても有効です。

荷物を背負わない

リュックやスポーツバッグを背負って通勤・通学している人も多いと思います。しかし、とくに夏場は背中が蒸れて不快ですよね。そこで、荷物から背中を解放してあげましょう。

スポーツ自転車でも、フロントバスケット(前カゴ)が取り付けられるタイプのクロスバイク等であれば、取り付けを検討してみてはいかがでしょうか。

もしくは、リアキャリを取り付けたり、さらにはサイドバッグを組み合わせることも考えられます。

フロントバスケットやリアキャリア、サイドバッグを活用して、荷物を背負わない身軽さを体験すると、なかなか元には戻れません。

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職場や学校に入る前にひと呼吸入れる

通勤や通学の際、いつも遅刻ギリギリという人はいませんか?

ギリギリの時間で行動するクセがついてしまっている人は、おそらく自転車通勤だろうが電車通勤だろうが、遅刻回避のためにダッシュを強いられるなどして、汗だくで目的地に着いているのではないでしょうか。

時間に余裕をもって、いったん涼しいところでクールダウンすることも、汗対策になります。もちろん、洗面所で汗を拭うなどできれば理想です。

汗をしっかり拭き取る

汗がニオイを発するのは、汗そのものが臭うのではなく、細菌による分解臭や、成分が変化する酸化臭が原因です。したがって、汗を早めに拭き取ればニオイの発生を抑えることができます。髪の毛も汗で濡れるので、タオルでしっかり拭くことをおすすめします。

汗を拭き取るには、タオルやボディーシートを使えばよいでしょう。ただし香料が強いボディーシートは、周囲に汗臭さとは別の不快感を与える可能性があるので、注意したいところです。

そして「着るもので対策する」の項で書いたように、汗で濡れた衣類を取り替えることができれば理想です。


【自転車の達人はこうしている】速乾性のあるウェアは基本、風を取り入れやすいアイテムなら汗をかいてもすぐに乾く!

——リンケージサイクリング・田代さんの場合

まず、汗をかくとこはすごく大切です。運動をすること水分をしっかりとること汗をかくことの循環は、身体を健康な状態に保つことができるからです。汗をかくことは自体は悪いことではなく、身体が正常に保てている状態だと理解しましょう。

田代恭崇さん

私も久しぶりに自転車に乗り、しっかり汗をかくとたまっていたものが抜ける感じがします。でも、こんな時の汗はかなり臭く感じますね(笑)

選手の頃はともかく、今はお客様をお連れするガイド業ですので、汗に対するマナーはやはり必要です。身体を拭いたり着替えを持っていたりは定番ですが、走行中にできるだけ汗をウエアーに留めないために、速乾性に優れたものを着用するのは、やはり効果的です。

そして、体温調節のしやすさにも着目しましょう。夏でも走る場所や時間帯によってはアウターを着用するケースもあるかと思います。そんなときも、重ね着がしやすく、かつ簡単に脱ぎ着ができるウェア、胸元が開けやすく風を取り入れやすいウェアを選ぶことで、体温調整がしやすく、走りながら汗を乾かすことができます。こういったことも、汗対策のコツかと思います。

田代恭崇(たしろ・やすたか)——神奈川県藤沢市、江ノ島のすぐ近くで体験型サイクリングプログラムを提供している「リンケージサイクリング」を主宰。2004年夏季アテネ五輪・自転車ロードレース日本代表選手。一般社団法人日本サイクリングガイド協会理事。

リンク: LINKAGE CYCLING


結論:自転車の汗対策は「快適な服」と「時間の余裕」

さまざまな汗対策を紹介しましたが、まとめると「快適な服」と「時間の余裕」がすべてと言えます。

汗がすぐに乾く「快適な服」を着ることは、汗対策の基本。そして、ゆっくり走り、休憩をとり、汗を拭き取って身だしなみを整える——これらの対策は、つまるところ「時間の余裕」が必要です。

冒頭に書いたように、人間が汗をかくのは当然のことです。そして、移動の時間に「いい汗をかける」のが自転車に乗るメリットでもあります。汗とうまく付き合って、夏場も快適な自転車生活を送りましょう。

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協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社