チェーンが外れてしまう——それは、クロスバイクやロードバイクに乗っている人であれば、一度は経験したことがあるトラブルではないでしょうか。どうして自転車のチェーンが外れて(落ちて)しまうのか、そもそもチェーンが外れないようにするためには、どうしたらよいでしょうか。「drawer THE BIKE STORE」の山路 篤さんに、詳しく聞いてみました。
【アドバイザー】
山路 篤(やまじ・あつし)さん
「drawer(ドゥロワー)」代表。工具メーカー、完成車メーカーを経て2010年に自転車業界に特化した人材育成を手がける「drawer(ドゥロワー)」を設立。2016年12月に「drawer THE BIKE STORE」を神奈川県大和市にオープン。
・drawer(ドゥロワー)
リンク: drawer THE BIKE STORE- ドゥロワー ザ・バイクストア – | – ドゥロワー ザ・バイクストア –
チェーンが外れることを、よく「チェーンが落ちる」と言いますが、走行中にチェーンが落ちてしまうのは、いうまでもなく正常な状態ではありません。山路さんのアドバイスを参考に、不安があればぜひ自転車店で点検してもらってください。
Q:そもそもチェーンが外れる(落ちる)理由はなんですか?
ペダルを漕いでいるときは、原則的にチェーンとギアが嚙み合っている状態です。変速ギアのついている自転車、中でもクロスバイクやロードバイクで一般的な「外装式」と呼ばれる変速システムの場合は、変速する際にこの噛み合わせが外れます。
外装式変速機の場合は、変速機(ディレーラー)を用い、チェーンを意図的に脱線(derail)させて、隣り合うギアへと移動させることで変速しているんです。
変速の際、チェーンは一時的に、スプロケットの歯先に引っかかった状態で脱線を始めます。そしてペダルを回転させることで、徐々にチェーンとスプロケットが噛み合って変速を完了します。このとき、何らかの理由でチェーンとスプロケットが噛み合わず、弾かれた状態、あるいはチェーンがスプロケットの歯先に乗り上げた状態になる——というのが、チェーンが脱落してしまう主な原因です。
なぜそんなことが起こるのかというと、変速機の調整ができていなかったり、ギアの歯が消耗していたりといった原因が考えられます。
シングルスピードや内装変速の自転車でチェーンが外れる場合は、チェーンの伸びやスプロケット、チェーンリングの消耗が考えられます。もしくは自転車が派手に倒された場合など、走行とは関係ない原因でしょう。
Q:チェーンが外れたら、どうすればよいですか? 原因により取るべき処置が変わると思いますが、落ちた時にやるべきことを教えてください。
まずは速やかにペダルの回転を止め、自転車を停止させましょう。
前後に変速機が付いているもので、フロント側がギアの内側、あるいは外側に落ちた場合は、チェーンを手で引っ張り上げてギアにかけるなどして(軍手があればベター)、比較的容易に回復させることが可能な場合が多いです。どこかに噛み込んでしまっているようなことがあれば、無理をせずに自転車店に相談してください。
一方、リア側の場合、最も大きなギア(もっとも内側にある大きなギア)の内側、つまりスポークとギアの間にチェーンが脱線してしまった場合は、速やかに自転車店に相談しましょう。もっとも小さなギア(もっとも外側にある小さなギア)の外側、つまりフレームとギアの間にチェーンが落ちた場合も同様に、速やかに自転車店、あるいはメカニックに相談しましょう。相対的にフロント側の脱線よりも、リア側の脱線の方が深刻なケースが多いと思います。
Q:走行中チェーンが外れるとどんなリスクがありますか?
走行中は、チェーンとギアが嚙み合うことで駆動していますので、ペダルに一定の反力を感じることができると思います。チェーンが落ちることによって、これらの反力が一気に無くなるので、乗車バランスを保つことができず、転倒につながる恐れがあります。
Q:そもそもチェーンが外れないようにするには、どうしたらよいですか?
メンテナンスと操作方法のふたつが考えられます。
多段式を前提としてお話しますが、チェーン落ちのほとんどは、変速機が正しく設定されていないことが原因です。定期的なメンテナンスで、これらの変速不良のほとんどは改善されるはずですし、変速不良に由来してチェーンが外れることもなくなります。また、チェーンはもちろんのこと、ギア(チェーンリング、スプロケット)の消耗にも気をつけましょう。
一方で、昨今の自転車用変速機はたいへん性能が高く、ひと昔前の変速機のように、変速自体に技術(例えば、変速の際にチェーンがスムーズに脱線するようにペダルを回転させるスピードや力を一時的に抜いてあげるなど)が必要だったころと比べると、どなたがどんな状況で変速操作を行っても、ほとんど問題が無いようになりました。
しかし、あくまでもチェーンは「脱線をさせて変速する」という前提に立って考えると、チェーンはねじられ、しかも、ねじられた状態でギアにひっかけているわけですから、その負荷は大変なものです。したがって変速の際には、優しい、ショックのない変速を心がけることは現在でも重要です。
例えば上り坂の途中のようにう、チェーンに大きな力がかかっている状態でムリな変速をするよりも、上りの手前で変速を終わらせておく、一気に多段を変速させることを避けるといった操作で、チェーンの脱落を防ぐことはできます。
Q:チェーンがギアから外れるのではなく、切れることもありますか?
チェーンが切れるのは、物理的に破断ということではなく、プレートとプレートをつないでいるピンからプレートが外れる現象です。外装変速の自転車だと、チェーンの消耗によってそのようなことは起こりえます。シングルスピードや内装変速の場合は変速操作によってチェーンがねじれることがなく、チェーンの厚みもあるので、チェーンが切れるということはなかなかありません。
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チェーンが外れてしまうという現象は、主に外装変速の自転車で発生すること、そして原因としては、メンテナンス状態など自転車側に由来する場合と、乗りての操作に由来する場合があることが、おわかりいただけたでしょうか。
もし、ふだんお使いの自転車が「ときどきチェーンが外れてしまう」といった状態であれば、なるべく早く自転車店で診てもらうとよいでしょう。
もし自転車の買い替えをお考えで、チェーンにまつわるトラブルとはなるべく無縁でいたいと思うなら、内装変速やベルトドライブの自転車を検討するのも「あり」です。今回の記事でも紹介したように、外装変速機はチェーンをずらして変速する仕組みです。内装変速機では「チェーンをずらす」といったことがありません。さらにベルトドライブなら、油汚れとも無縁です。
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