こんなときどうする!? 自転車の交通ルール【右折編】

自転車は軽車両で車道の左側通行が原則——そう言われて実際に車道を入ってみると、運転免許をもっている人でも「こういうときってどうするの!?」と思う場面が少なくありません。その中で代表格とも言える「右折」の方法について、実際の通行方法を確認していきましょう。

自転車は二段階右折するのが原則

まず大原則として、道路交通法では「車両は道路の左側を通行する」よう定められています。また、自転車は車両通行帯のない道路では左側端を、車両通行帯のある道路では原則として「いちばん左側」の車両通行帯を通行します。

もうひとつの大前提として、自転車が右折する際は「二段階右折」をしなくてはなりません。警視庁のWebサイトにわかりやすくまとまっているので、一度チェックしてみましょう。

リンク: 自転車の交通ルール 警視庁

鋭角的に右折する「小回り右折」はできません。

また、信号機がある交差点では「対面する信号機」に従う必要があります。右上図の例では、信号機Aが青のときに、左側端を交差点の角(側端)まで直進し、右側に向きを変え停止、そして信号機Bが青になったら進みます。

道路交通法では、下記のように定められています。

軽車両は、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。

(道路交通法 第三十四条 3)

丁字路だって二段階右折

みなさんは、こんな丁字路があったらどのように右折していますか?

丁字路であっても、自転車では二段階右折が必要です。

対向車がなければ二段階右折は必要ないと勘違いしている人も少なくないですが、間違えないように注意しましょう。

左上図の場合は、まず信号機Aに従って進行し、交差点の側端で待機、そして信号機Bが青になったら進行します。

右上図の場合は、まず信号機Cに従って進行し、交差点の側端で待機、そして信号機Aが青になったら進行します。対向車がこない交差点だからといって、信号機Cが青の時に一気に右折することはできません。

ちなみに交差点によっては、上の図で「信号機B」としている信号機に「自転車用専用」と書かれている場合があります。

丁字路にある「自転車用専用」と書かれた信号機

筆者が交通ルールにあまり関心を持っていなかった頃は、そもそもこの位置に車両用の信号機がある意味がわかりませんでしたが、二段階右折の際には必要ですね。

Y字路を右に行きたい場合はどうする!?

さて、意外と難しいのがY字路を右方向に行きたい場合です。

自転車でこのY字路を右方向に行くには、どうしたらよいでしょうか。直進するのと同じような感覚で、右方向へ進んでもよいものでしょうか。

自転車の達人が解説する「Y字路の通り方」

今回は、BRI-CHANで「自転車の達人」としておなじみ、リンケージサイクリングの田代恭崇さん(2004年夏季アテネ五輪・自転車ロードレース日本代表、一般社団法人日本サイクリングガイド協会理事)に、実際のY字路を題材としてアドバイスをいただきました。

Y字路を右方向に進むときの基本

まずは、Y字路を右方向に進む際の基本です。

Y字路の交差点を右方向へ通行するには

道路交通法では、車両は道路の左側を通行するよう定められています。自転車にあっては道路の左側端に寄って通行することが大原則となり、複数車線がある場合でもいちばん左側の車線を通行します。

では、Y字路交差点を右方向の道路へ通行する場合は、どうすればよいでしょうか。

基本は道路の左側端に沿って通行し、右方向に進みます。複数の車線があるY字路なら、いちばん左の左折レーンを使って右方向に通行することになります。ただし、交通量の多い道路でこの方法を実行するのは、かなり難しいと言えます。

普通自転車は、車道通行に危険な状態がありやむを得ない場合には、例外的に歩道を通行することも可能なので、無理せずに歩道を通行することも選択肢に入れましょう。

歩道を通行する際は、車道寄りを徐行し歩行者の通行を妨げる場合には一時停止します。歩道は歩行者のための道ですので、歩行者を最優先に通行し、歩行者が多いときには自転車から降りて「歩行者として」歩いて通行しましょう。

(田代さん)

田代さんのお話を踏まえて、先ほどの図のY字路において考えられる通行方法は、次の3つです。

(1)信号機Aに従い、左側単に沿って右方向へ進む。

ただし、左方向に進む車両と交錯するリスクがあります。

(2)信号機Aに従い、左側単に沿って左方向へ進み、横断歩道を渡り右へ向きを変える。信号機Bが青になったら左折する。

(3)いったん歩道に入り、横断歩道を渡って、さらに歩道を進んでから車道に復帰する。

(2)と(3)の方法は、(1)と比較すると左方向へ進む車両と交錯するリスクは低くなるでしょう。ただし「自転車通行可の歩道」も「横断歩道」も、歩行者が優先であることはお忘れなく。

なお、自転車が歩道を通行できる条件について、道路交通法では次のように定められています。

普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。

一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。

二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。

三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。

・道路標識や道路標示によって通行することができるとされている場合。
・運転者が児童、幼児、70歳以上の者又は車道通行に支障がある身体障害がある者である場合。児童(6歳以上13歳未満の者)、幼児(6歳未満の者)
・車道又は道路の状況に照らして、通行の安全を確保するために、普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められる場合。

(第六十三条の四)

このようにY字路は少々複雑なのですが、上の図のような「きれいなY字路」はめったになく、世の中のY字路はなかなかに意地悪で、自転車で通行する際にはどうすればよいのか迷ってしまうこともあります。そんなY字路を例に対しても、田代さんにアドバイスをいただきました。

ケース1:町田街道「滝の沢」交差点(東京都町田市)

まずひとつめは、こちらの交差点です。

Googleマップのストリートビューを貼っておきます。

この交差点は片側1車線の途中で右方向と左方向に分かれており、その先にそれぞれ信号機があります。右方向には矢印信号もあり、信号パターンも複雑です。信号パターンの詳細は割愛しますが、向こう側から来る交通を捌くために「右方向が赤、左方向が青」や「右方向が青矢印、左方向が赤」といったタイミングがあります。このY字路を、右方向に進みたい!

では、田代さんの解説です。

このY字路を右方向に進むには、次の3つの方法が考えられます。

方法(1):車道の左側端を通行し、交差点内で右方向の車道の左側端へ進行します。左方向(信号機A)と右方向(信号機B)の信号は完全には連動していないので、後方からの車に対して十分な安全確認を行い、必要に応じて一時停止しましょう。交通量次第では難しく危険も伴うこともあります。

方法(2):車道の左側端で横断歩道まで通行し、そこから横断歩道を渡り歩道を通行し、右方向道路の横断歩道を過ぎた場所で車道に出ます。車両用信号(信号機A)が青の時に横断歩道手前で停止するので、やや危険も伴うこともあります。

方法(3):交差点手前で歩道に入り歩道と横断歩道を使って通行し、右方向道路の横断歩道を過ぎた場所で車道に出ます。交通量が多いときや走行に不安があれば、ベターな方法でしょう。歩道の通行方法を順守しましょう。

(田代さん)

ケース2:鎌倉街道と鶴川街道の分岐点(東京都町田市)

東京ローカルな感じで申し訳ないですが、続いての例はこちら。

まずは、Googleマップのストリートビュー。

もともとは単純に、太い鎌倉街道(右に行く道)から、細い鶴川街道(左に行く道)が「それる」といった感じのY字路でした。しかし、近年の道路改良によって左折レーンができ、しかも左折レーンの先には分離帯ができました。そして(自転車通行可の)歩道に入ったほうがよいかも——と思っても、200m手前からガードレールと植え込みが切れ目なく続いています。

ちょっと意地悪すぎる例かもしれませんが、大通りではこのように初見では悩ましいY字路が少なくありません。

こちらも、田代さんに解説していただきましょう。

方法(1):左側車線を通行し、交差点内で右方向車道の左側端へと進行します。信号がないので、後方から来る左方向と右方向の車に対して十分な安全確認を行い、必要に応じて一時停止しましょう。交通量次第では難しく危険も伴うこともあります。また、交差点内に分離帯もあるので十分に注意しましょう。

方法(2):左側車線で進行し、横断歩道を渡り再び車道に出ます。

方法(3):左側車線で進行し横断歩道を渡り、歩道通行して交差点を過ぎてから車道に出ます。この先にはバス停があるため、歩行者優先で歩道の通行方法を順守しましょう。

(1)の方法で不安があれば、(2)の通行方法がベターでしょう。

(田代さん)

ケース1、ケース2のいずれも、自転車で右方向へ進みたい場合、車道の左側端を通行し、右方向への車道の左側端へと安全に通行できれば、それで問題ないということがわかります。しかし、左方向へ進もうとする車が後方から接近している場合は気をつけなくてはいけません。早めにオーバーアクションで合図を出すなど、工夫が必要になりそうです。

ちなみに筆者の個人的なことを書きますと、ケース2の場合は「右方向に行きたいときも、いったん左側に進んで迂回する」という手段をとっています。

自転車で右折したい(右に行きたい)——ただそれだけのことなのですが、そこにはちゃんとルールがあること、そして交差点の形状によっては「意外と難しい」ということがおわかりいただけたのではないでしょうか。

いちばん大切なのは、ルールを守り、自分と周囲が安全に通行できることです。場合によってはあえて左折して迂回するなど、自分にとっての「モアベター」な方法をとってください。

リンク: 自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~|警察庁Webサイト

※道路状況によっては今回の事例がすべての道へ当てはまるものではないので、現場の通行方法にどうしても不明な点がある場合は、みなさんの地元の警察に確認するなどしてください。

今回のアドバイザー:田代恭崇(たしろ・やすたか)さん

神奈川県藤沢市、江ノ島のすぐ近くで体験型サイクリングプログラムを提供している「リンケージサイクリング」を主宰。2004年夏季アテネ五輪・自転車ロードレース日本代表選手。一般社団法人日本サイクリングガイド協会理事。

リンク: LINKAGE CYCLING

text&photo_SUGAI Gen(CyclingEX

協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社