春からスタート!自転車通勤で気をつけたい10のポイント

春が待ち遠しい、今日この頃。自転車通勤を検討するにも、絶好のタイミングではないでしょうか。コロナ禍が続く中、自転車通勤は不特定多数の人との接点が少ない上に、オープンエアーの環境で感染リスクも低く、さらに運動することにより健康増進につながることから注目されています。

国による「自転車活用推進計画」には自転車通勤の促進が含まれており、自転車の通行環境も少しずつよくなってきていますし、社員の健康増進などの理由で通勤制度の見直しや環境整備を進めている企業もあります。何より、自転車通勤は今までとは違った暮らし方にスイッチするチャンスでもあります。

そこで今回は、春に向けて自転車通勤を考えている人に気をつけてほしい10のポイントを紹介していきます。

文:田代恭崇(2004年夏季アテネ五輪・自転車ロードレース日本代表)

1.会社が自転車通勤OKか確認しよう

[通勤制度に自転車はある?]

まずは、勤務先における自転車通勤制度の有無を確認しましょう。会社によっては、手厚い自転車通勤手当が用意されていることもあります。一方、そもそも自転車通勤が認められていないのであれば、会社に隠れてまでするものでもありません。

雨天時に別の手段が可能かどうかも、気にしておきたいところ。通勤手当内で別方式の通勤が認められていれば、晴れの日は自転車、雨なら電車で——と、フレキシブルに対応できます。

[受入環境は整っている?]

勤務先に駐輪場はあるでしょうか。あれば、それは屋根付きそれとも室内か確認しましょう。会社によっては、更衣室やシャワーが設けられている場合もあります。そこまで進んではいなくとも、着替えのスペースは確保したいところです。

2.職場までの距離や時間を確認しよう

[職場までの距離は?]

まずはGoogleマップなどを活用し、通勤経路、距離や時間を大まかに確認しましょう。一般的な街乗り自転車の行動半径は数kmといったところですが、スポーツ自転車ならば片道20kmの自転車通勤も不可能ではありません。

[他の通勤方法での時間は?]

自転車だけでなく、公共交通機関や車での時間はどのぐらいかも改めて確認しておきましょう。都市部で電車通勤している人の場合、乗り換えで意外と時間をロスしていて「実は自転車のほうが早い」なんてことも。また、朝夕の混雑が激しい車通勤も同様です。

Google マップで通勤ルートを調べてみよう。一部エリアは自転車ルートの検索も可能だ

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3.自転車通勤のルートを考えよう

[安全が優先]

自転車通勤の距離がイメージできたら、もう少し具体的にルートを検討しましょう。最短ルートを選びがちですが、車や人の往来が少ない道が選択できればベスト。車と自転車の走行位置を視覚的に認識できる自転車レーンや自転車ナビラインが設けられた道路があれば、積極的に選択してください。Googleマップのストリートビューなどを活用して、安全に走行できるルートを見つけましょう。

[試走が肝心]

ルートを検討したら、実際に走ってみて危険性の有無や時間を確認しましょう。まずは(交通量こそ異なるものの)週末に試走することをおすすめします。なお、実際の通勤ではパンクなどのトラブルが起きるも想定して、試走した時間よりも余裕をもっておきましょう。

4.通勤自転車はどんな車種がいいか

自転車通勤のための自転車は、どんなものがよいでしょうか。タイプ別に見ていきましょう。

[シティサイクル] 

片道5kmぐらいなら十分です。

[クロスバイク/ロードバイク] 

片道10〜20kmぐらいならおすすめです。

[電動アシスト] 

体力に不安がある人、なるべく楽したい人にはベストチョイス。

使用する駐輪場の様式によっては、丁寧な扱いが必要なロードバイクは向いていないこともあります。そういう意味では、軽快な走行性能と扱いやすさをあわせもつクロスバイクが、手軽かつ万能かもしれません。帰りに買い物などでちょっと寄り道するにも、クロスバイクがぴったりです。

※経路が勤務先への申請と異なると万が一の際に労災が適用されない場合もあるので、事前に確認しましょう

5.自転車の装備品は何が必要か

自転車通勤を充実したものとする、各種アイテムを紹介します。

[必須] 

前照灯、反射板(尾灯)、ベルは必須です。前照灯は暗所で路面をしっかり確認できる明るいもの、後方は反射板に加えて明るい尾灯を装着するとよいでしょう。自転車は車両としては小さくて対向車から見えづらいので、安全対策として「被視認性を高める装備」が重要です。そして、盗難対策に鍵(ロック)も必須のアイテムです。

ちなみに、ブリヂストンのクロスバイク「XB1」や「TB1」、そして「ANCHOR RL1」には、ライト、スタンド、ロックが標準装備されています。

[おすすめ] 

泥除け、スタンド、ボトルゲージ(ドリンクホルダー)もあると快適です。また、軽度な車両トラブルを治せる携帯工具や携帯ポンプ、パンク修理キットなどもあるとよいでしょう。

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6.自転車通勤のスタイル

自転車通勤をするにあたっては「どんな服装にするか」も悩みどころです。

[短距離スタイル]

スーツなどふだん勤務する際の服装で問題ありませんが、ズボンの裾がチェーンなどに接触して汚れないように裾バンドなどを活用しましょう。

女性の場合、ロングスカートや裾が広がったパンツスタイルでは汚れや巻き込みのリスクがあります。実際にまたがってみて「これなら大丈夫そうだな」という服装をチェックしておきましょう。

[中長距離スタイル]

速乾性に優れたインナーに、防風性能があって汚れにも強いマウンテンパーカー、動いやすいストレッチ素材のパンツ、スニーカーなどがおすすめです。距離と時間を要する通勤の服装は、動きやすさを重視したいですね。また、他の車両からの視認性も考慮し明るい色を選べば、安全対策にもなります。

会社によって勤務時の服装もさまざまだとは思いますが、ある程度距離のある自転車通勤を実践している方に話を伺うと、会社に到着したら「通勤用の服」から「勤務用の服」に着替えることが多いようです。着替え前提の場合、勤務時の服装をどうやって持っていくのか(もしくは会社に常備するのか)も考えておきましょう。

[汗対策]

春夏の汗は誰でも想像できると思いますが、実は秋冬も汗冷えは大敵です。顔や身体をふけるタオルや汗拭きシート、インナーの着替えを持参するか、会社に常備しましょう。

[雨対策]

朝から雨、もしくは退勤時に土砂降り……といった場合は、自転車通勤を諦めることも大事。しかし、途中で雨が降ってきたときのための対策は必要です。雨天用に、バタつかないレインウエアを携行するのがよいでしょう。

[ヘルメット]

自転車には、不意な転倒により頭を地面に打って大きな怪我をするリスクがあります。とくに頭部は命に関わりかねないので、ヘルメットは必ず着用しましょう。また、転倒時に地面に手をついて指や手のひらを怪我した際も、仕事や日常生活に想像以上の支障をきたします。安全対策の意味からも、グローブは必ず着用しましょう。

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7.荷物はどうする?

手ぶらで通勤できるよ!という方は、そうそういないと思います。自転車通勤の荷物は、どのように運べばよいでしょうか。

[自転車に載せる]

ママチャリタイプであれば、たいていは前カゴがあります。しかし、走行性能重視のクロスバイクなどにはカゴが標準装備されていません。そんな場合は、リヤキャリアとサイドバックを装着して荷物を収納するのも手です。

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[身体に背負う]

もっともシンプルな運搬手段は、バッグを背負うこと。ただし、ショルダーバッグやトートバッグ、斜めがけのバッグでは走行中に不意に動いてしまい、前輪に絡まるなどのリスクがあります。

いちばんのおすすめは、しっかり身体に装着できるリュックタイプです。背中に汗がたまらないエアベンチレーションが設けられているもの、そして素材に防水性があるものがよいでしょう。収納式もしくは着脱式のレインカバーが備わっているものもあります。

8.自転車の交通ルール

自転車は軽車両、つまり車両の仲間です。自分と周囲の安全のために、交通ルールを守って通勤しましょう。

とくに次の5つを常に心がけてください。

・原則として車道の左側を通行

・例外的に歩道を通行する場合は歩行者が絶対優先

・信号を守る

・信号機のある交差点を右折する際は「二段階右折」

・飲酒運転禁止

自転車は軽車両であり、交通ルール上では「車と同じ」と認識してください。交通ルールを守り、歩行者を保護することも責務です。また、他の車両から自分の身を守ることも大事。そのためにも、無理せずに安全第一を心がけましょう。

9.自転車保険に入ろう

昨今は、保険加入が義務付けられている自治体も多くあります。自分の怪我を補償する「傷害保険」と、誰かに怪我や負わせたり物を壊してしまった際に補償する「個人賠償責任保険」がありますが、できれば両方とも加入しておきたいところです。

近年はコンビニのマルチコピー機やスマートフォンなどで簡単に加入できる「自転車保険」も充実しています。「傷害保険」と「個人賠償責任保険」を併せもち、かつ事故などで動かなくなった車両を運搬するロードサービス、自転車事故で利用できる示談サービスなど、「自転車保険ならでは」のサービスを用意した商品もあります。

また、自動車保険や火災保険、クレジットカードの付帯保険などに個人賠償責任特約が用意されている場合もあるので、ぜひ確認しておきましょう。

「TSマーク」の活用も検討しましょう。「自転車安全整備店」で自転車の点検と整備を受けて「TSマーク」が貼付されると、傷害保険と賠償責任保険が1年付帯されます。1年ごとの更新の際にプロのチェックとメンテナンスを受けることになるので、自転車の車検のようにも活用できます。

10.自転車の整備も欠かさずに!

自転車は気軽な乗り物ではありますが、それゆえに整備不良の自転車に乗っている人が多いのが現実です。

自転車は車と同じ車両であり、自分の命、そして他人の命をも奪ってしまう可能性のある乗り物です。整備不良が原因で最悪の事態にならないよう、点検整備をしましょう。

例えば、タイヤの空気は自然に少しずつ抜けていきます。空気が適正に入っていないとパンクの原因になりますし、走行性能も低下します。タイヤの空気圧点検は、日頃から行いましょう。

そして、チェーンへの定期的な注油も忘れずに。チェーンが摩耗すると、走行中に切れてしまうということにもなりかねません。

日々の整備は、「安全に楽しむために!クロスバイクの乗車前点検と簡単なお手入れを解説!」を参考にしてください。

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クロスバイクなどのスポーツ自転車は長距離の通勤にも使用できますが、通勤途中にパンクしてしまったときに「自分ではお手上げ」だと、遅刻してしまいます。最低限、パンク修理はできるとよいでしょう。「クロスバイクのチューブ交換にチャレンジ」も参考にしてください。

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終わりに

今まで鉄道や車で通勤していた人が、いきなり自転車通勤に完全移行するのはハードルが高いかもしれません。会社の制度を確認し、関係部署に相談しながら、まずは週に1回だけ自転車通勤をしてみるというのもよいでしょう。週に1回の自転車通勤でも、軽度な運動で健康維持になりますし、気分転換ができて仕事へのよい影響も期待できます。そして、自転車を走らせながら街を走り抜けることで、今までとは違ったものが見えてくるかもしれません。

自転車通勤に興味があるという方は、この春ぜひ実践に向けて動き出してみてください!


田代恭崇(たしろ・やすたか)

神奈川県藤沢市、江ノ島のすぐ近くで体験型サイクリングプログラムを提供している「リンケージサイクリング」を主宰。2004年夏季アテネ五輪・自転車ロードレース日本代表選手。

リンク: LINKAGE CYCLING

photo_リンケージサイクリング、BRI-CHAN編集部

協力・協賛:ブリヂストンサイクル株式会社